二万人虐殺の“独ソ戦の闇”、唯一の女性犠牲者を描くノンフィクション 日本人作家が特別賞

小林文乃「最優秀歴史書コンテスト」特別賞

 小林文乃『カティンの森のヤニナ 独ソ戦の闇に消えた女性飛行士』(河出書房新社/2023年3月27日刊)が、ポーランド外務大臣主催の「外国語で書かれた最優秀歴史書コンテスト(2025)」で特別賞を受賞した。

 『カティンの森のヤニナ 独ソ戦の闇に消えた女性飛行士』は小林文乃による歴史ノンフィクション作品。

 カティンの森事件ーー二万人のポーランド将校が何者かによって虐殺された独ソ戦の闇。その犠牲者のなかに、たったひとり女性がいたことはあまり知られていない。女性の名前はヤニナ・レヴァンドフスカ。優秀なパイロットであった彼女の頭蓋骨は調査隊によって持ち去られ、長らく歴史の表舞台から姿を消した。

 彼女の足跡を追う旅は、ワルシャワからクラクフ、グダニスク、ポズナン、そしてカティンの森へ……。ポーランドという国家と一人の女性、そしてその一族の運命が重なり合う、歴史紀行ノンフィクション。

 「最優秀歴史書コンテスト」は「外国語で書かれたポーランドの歴史に関する歴史書」を選考対象として2017年に創設された。今年度は2023年または2024年に刊行された書籍を対象に、2025年5月22日から8月31日の期間に募集。日本人作家の特別賞受賞は、今回が初めてとなる。

■小林文乃 受賞の言葉

この度の受賞を、大変光栄に思います。日本の読者だけでなく、ポーランドやその他の国の方々にもこの本を知ってもらえるチャンスを得たことが、なにより嬉しいです。

本作を執筆中にウクライナ戦争がはじまり、私自身、本の世界が突然リアルに感じられるようになりました。その感覚こそが、今回の受賞理由のすべてと言えるのではないでしょうか。

混迷の続くいまだからこそ、ひとりでも多くの方に届けたい一冊です。

■著者プロフィール
小林文乃 Ayano Kobayashi 
1980年生まれ、ノンフィクション作家、出版プロデューサー。京都造形芸術大学卒業。著書に『グッバイ、レニングラード ソ連邦崩壊から25年後の再訪』、亀山郁夫対談集『ショスタコーヴィチを語る』に対談相手として参加。

■書誌情報
『カティンの森のヤニナ 独ソ戦の闇に消えた女性飛行士』
著者:小林文乃
価格:2,552円(税込)
発売日:2023年3月27日
出版社:河出書房新社

©日刊ゲンダイ

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「新作」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる