赤嶺総理が語る、大喜利ならではの面白さ「縛りがあるからこそ、老若男女が同じように遊べる」

大喜利芸人・赤嶺総理インタビュー
赤嶺総理『おおぎりぼっち~大喜利百題百答~』(双葉社)

 大喜利芸人として知られる赤嶺総理による初めての著書『おおぎりぼっち~大喜利百題百答~』(双葉社刊)が2025年10月22日に刊行された。

 本著は「こんな学校はイヤだ」というお題をアレンジしながら、一問一答を繰り広げるという内容。R藤本、ザ・ギースの高佐一慈とともにお題を考える座談会も収録された、まさに大喜利尽くしの1冊となっている。

 常に大喜利のことを考えているという赤嶺に、著書について、大喜利の魅力について語ってもらった。撮影で手にしているのは、愛用する黒のプロッキー。「左利きなので、書いている時に手の側面にインクがついてしまいがちなんですけど、プロッキーは水性なのですぐ拭き取れますし、裏移りもしないのでいつも使っています」と話してくれた。


自然と思いついた遊びだった気がする

――初めての著書の発売された現在の心境を聞かせてください。

赤嶺総理:何より、家族が喜んでくれています。弟はわざわざサイン本を買ってくれたみたいで、嬉しいですね。発売日当日、吉本の本社へお仕事で向かう途中、書店に行ったら、本当に並んでいて。著者だというのはさすがに恥ずかしかったので名乗らず、店員さんに「本が並んでいるのを撮って、SNSに上げてもいいですか?」と許可を取って写真を撮らせてもらったんですけど、不思議な感覚というか。表紙の絵も字も自分で書いたので、手書きしたものがちゃんと本になって書店に並ぶなんて、夢の中で見る光景みたいでした。

 又吉(直樹)さんに帯を書いていただいたのもありがたくて。直接はお会いできてないのですが、又吉さんのYouTubeで紹介していただけました。配信された回を観させてもらいましたが、本を読んでの感想を話してくださったり、中にあるお題や答えで遊んでくださっていてありがたかったです。

又吉が大喜利のお題と回答を即興で考えてみたら…「こんな学校はイヤだ」を元に100個のお題と回答が載った『おおぎりぼっち~百題百答~』著者の赤嶺総理のスゴさとは?芸人とハガキ職人の違い【夜の公園#91】

――「こんな学校はイヤだ」というシンプルなお題をベースに、そのお題までにも言葉を足しながら一問一答していくという内容に行き着いたのは?

赤嶺総理:最初、大喜利の教科書的な本を出しませんかということで 双葉社さんからお声がけいただいたんです。ただ、大喜利って人によりますし、場によるもの。そういったことを省いたものなら、すでに本やネットでたくさん書かれているので、私が改めて本にするには荷が重いなと。そこで、「こんな学校はイヤだ」というお題に書き足して一問一答するのはどうですか?と断られる前提で提案してみたら、それで行きましょうと言っていただけて。自分がやりたいことを本にできるならばということで、お引き受けすることにしたんです。

 それに、ひとりでこういう遊び自体をたまにやっていたんですよね。長年、いろんな大喜利ライブに出ていると同じお題に当たることもある中で自然と思いついた遊びだった気がするんですけど、本を出しませんかと声をかけていただいた時に、これだったらできるだろうと思ったところも大きかったです。

――お題と答えはすべて書き下ろしとのことですが、遊びでやっていたとはいえ、バリエーションをつけないといけない大変さもあったのですか。

赤嶺総理:2週間くらいで30題くらいはバーっと書き上げられたんですけど、おっしゃる通り、自分の中にあるものしか出てこないので、バリエーションが限られてくるんですよね。40、50題くらい考えた段階で、ザ・ギースの高佐さんとR藤本さんと一緒にお題を考えて、できたお題に答えるという座談会をさせてもらうことにしました。

 元々、高佐さんが「タカサ大喜利倶楽部」というYouTubeチャンネルを運営していて、ゲストふたりを招いて大喜利をやっているんです。そこで、私はR藤本さんとふたりで呼んでもらって実験的な大喜利をやっていたので、誰かとお題を考えたいと思った時にパッと浮かんだのがそのおふたりだったんです。3人の答えとして掲載したのは10題なんですけど、掲載していないものは持ち帰ってひとりで考え直しました。

――ひとりでやっていた遊びを、この時初めて誰かと共有したんですね。著書の中にも書かれていますが、赤嶺さんになかった発想や視点がそこで新たに生まれて、思考が拓けたところがあったと。

赤嶺総理:本にするにあたって無意識に避けていたセリフ調が出てきたり、沖縄出身なんですけど「イヤだ」の“イヤ”が「イーヤーサーサー」だとは思いつけなかったんだということに気づいたりしました。おふたりが作ったお題の形、たとえばR藤本さんが考えた「こんな学校はイヤ」の「イ」と「ヤ」にそれぞれ縦書きで「インドの」「ヤキュウみたい」と加えたお題から着想を得て、「こんな学校はイルカOK、ヤギNG」だというお題を考えましたし、高佐さんが考えた「こんな学校はイヤだとこんなスナックはイヤだに同時に答えてください」というお題から、同じようなかたちのお題も考えて入れたはずです。

 あと、座談会内で、R藤本さんがお題をバーっと見て「恋愛系のお題がない」と指摘してくれたので、恋愛系のお題を作りました。そこから、普段の大喜利でも恋愛系の答えを書いたりするようになって。今は野球とアホアホ系を広げているところです(笑)。

自分の記憶にある学校あるあるを、なるべく残したい

――では、本著の中でお気に入りのお題と答えを教えていただけますか?

赤嶺総理:最近の自分だから思いつくことができたなと感じたのは、「ボードゲームこんな学校はイヤだの説明書に書かれていること」というお題。趣味でボードゲームをやっているんですけど、説明書に癖があるというか、ボードゲームの世界観に入り込めるような書き方がされているんです。それになぞらえて、「母校の制服が一番ダサい人がスタートプレイヤーです」っていう答えがパッと浮かんだのは気に入っていますね。あと、情報解禁の際、例として出されていた「こんな管理がヘタな学校はイヤだ」という問いと答え。芸人だとこの答えは伝わりづらいあるあるですけど、私は構成作家もやっていて、最新のファイル名がどれかわからなくなったという自らの経験をイメージして出した答えだったので、記事を読む人が刺さるのはこれだと感じて(出版社サイドが)選んでくれたんだろうなと想像したりしました。

――本に掲載するにあたってこだわったところは?

赤嶺総理:自分の記憶にある学校あるあるを、なるべく残したいと思っていました。なぜなら学校あるあるって時代によって変わっていくから。私の時代は、ジュースの横に「これだけの砂糖が入っています」という文字と一緒に角砂糖が何個も置かれた写真が保健室の壁に貼ってあったりとか、一番前の席はチョークの粉が飛んできやすかったりとかあったんですよね。あと、リコーダーの指かけの部品を今回、絵回答にしたんですけど、自分より年上の方は使ってないものだったというのが衝撃で。そういう世代によって違うあるあるを、今後、感想でみなさんから聞けたらいいなと思っています。

――元々『週刊ジャンプ』の投稿から大喜利に興味を持たれたんですよね。芸人になろうと思った時、ずっと大喜利をやっていきたいという思いもあったんですか?

赤嶺総理:最初はコンビを組んでコントをやっていて、大喜利は趣味としてネタづくりに役立つかもしれないとしか思っていませんでした。それに、今のように大喜利の仕事でご飯が食べられるようになるとも思ってなくて。もちろん構成作家としてが8割くらいで、芸人としての仕事だけではないですが、大喜利がたくさんできて充実しています。

――赤嶺さんの思う大喜利の魅力はどんなところにありますか。

赤嶺総理:女性ピン芸人であるとか、演技力や声の小ささなど個人的な制約がたくさんある中、私はいつも消去法でネタを考えていくんです。けど、大喜利はひとつのお題と紙、ペンが与えられるという縛りがあるからこそ、老若男女が同じように遊べるというか。割とならされた状態で、みんなが同じように楽しめるところがいいなと思います。

――そんな赤嶺さんが「この人の大喜利はすごい」と一目置いてしまう人は?

赤嶺総理:たくさんいるんですけど……発想でいえば、バカリズムさんはすごいなと思いますし、唯一無二感でいえば、ママタルトの檜原さんとか。ロングコートダディの堂前さんと真空ジェシカの川北さんもすごいなと思います。近しい後輩でいうと、おミュータンツの川嶋おもち、イチゴのイクトは、自分には出せない表現力のある大喜利をするなとも思います。

――いろんな表現があるし、いろんな答えやお題があるのも大喜利の魅力だと。

赤嶺総理:そうですね。この本はお題と答えがひたすら載っているので、さまざまに楽しんでいただけるのかなと思っています。大喜利のネタ本として楽しむのはもちろんのこと、お題を見て自分で答えを考えてから答えの書いてあるページをめくることもできますし、絵の回答は飾っていただくこともできます。この答え、どうやって思いついたのかなと想像しても楽しいでしょうし、純粋に学校あるあるとしても楽しめると思うので、それぞれの楽しみ方を見つけてもらえたら嬉しいです。

■書誌情報
『おおぎりぼっち~大喜利百題百答~』
著者:赤嶺総理
価格:1,760円
発売日:2025年10月22日
出版社:双葉社

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