『ヒロアカ』オールマイトを救った孤高のヴィラン……ステインとは何者だったのか?

※本稿は『僕のヒーローアカデミア』のネタバレを含みます。
圧倒的なカリスマ性によって、多くのキャラクターに影響を与えた“ヒーロー殺し”ことステイン。10月から放送が始まったTVアニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』では、その壮絶な生き様の末路が描かれることとなり、大きな反響を呼んだ。
そこで本稿では、これまで描かれてきたエピソードの数々を振り返ることで、「ステインとは一体何者だったのか」を浮き彫りにしていきたい。
ステインは世直しのためにヒーローを襲っているという特殊なヴィラン。現在の社会のことを「偽善と虚栄で覆われた、いびつな世界」と呼び、自分が信じる“正しい社会”を作るために尽力している。
ステインにとってヒーローとは「偉業を成した者にのみ許される“称号”」であり、真のヒーローと認めているのはオールマイトのみ。その他は「英雄気取りの拝金主義者」と呼んで軽蔑している。ただしヒーローとして見どころのある人物を見逃すという一面もあり、単行本6巻から7巻にかけて描かれたエピソードでは自分の命を度外視して他人を救おうとする緑谷出久と轟焦凍に将来性を見出していた。
私利私欲のためではなく、揺るぎない信念にもとづいて行動し、偽物のヒーローと共に「徒に“力”を振りまく犯罪者」も粛清対象だと語る……。その姿はヴィランのなかでも飛び抜けて異質で、ある意味気高さに満ちており、歴戦のプロヒーローですら戦慄させられるほどだった。
またステインは保須市襲撃事件でヒーロー相手に大立ち回りを演じ、ついには逮捕されるのだが、その顛末がニュースで報じられたことで世間に大きなうねりがもたらされることになった。グラントリノはステインのカリスマ性をオールマイトの「平和の象徴観念」と同質だと言い、その思想に感化された人々がヴィラン連合に集まることになると指摘。そして実際にグラントリノが予想した通り、荼毘とトガヒミコがヴィラン連合に加わることになる。
さらにステインは破壊衝動しか持っていなかった当時の死柄木弔に対して「信念なき殺意に何の意義がある」という問いを投げかけることで、その胸の内にあった信念を自覚させるきっかけを作り出した。皮肉にも死柄木の信念はステインとは真逆で、「オールマイトのいない世界」を作り、正義の脆弱さを暴くというものだったが、いずれにしろステインは物語に大きな影響を与えた最重要人物の1人と言えるだろう。
最期まで信念を貫き通した孤高のヴィラン
ステインというキャラクターの魅力は、物語の終盤でさらに加速した。その決定的なエピソードとなったのが、33巻収録の第326話だ。この話ではステインがオールマイトと初めて接触し、彼が再起するためのきっかけを作るという重要な役どころを担っている。
ヒーローの社会的な信頼が失われ、混乱が巻き起こる世界。オールマイトは脱ヒーロー派の市民に悪戯された自身の銅像の前で、失意に沈んでいた。その胸にあったのは、使命感に駆られて暴走し始めた出久を止められなかった……という無力感だ。
さらにオールマイトはステインから「おまえはオールマイトじゃない」「偽物め」という言葉を投げかけられても反論はせず、自分がやってきたことの“結果”が今の社会の惨状だと振り返り、「私だけがヒーローから遠ざかり続けている」と自嘲するのだった。
これに対してステインは、「オールマイトが最後に救った女」が市民に悪戯されたオールマイトの銅像を毎日清掃していることを説明する。そしてオールマイトのやってきたことは決して無駄になっておらず、その信念に影響を受けた人間たちが「新たな大火」へと進化しつつあることを力説。さらにはオールマイトにタルタロスで得た情報を託すと、「必ず この“ヒーロー40名殺傷犯”を終わらせに来い」と発破をかける……。
この世で誰よりもオールマイトを理解する人間が、オールマイトもとい“八木俊典”を再起させるために自分の思想を全力でぶつけるという展開に、思わず胸が熱くなってしまった人も多いのではないだろうか。
そしてステインは、オール・フォー・ワン(AFO)とオールマイトの最終決戦においても大きな役目を果たす。窮地に追いやられたオールマイトがトドメを刺される寸前、個性「凝血」を使ってその命を救うのだ。
AFOを完全に制圧することはできず、ステインは致命傷を負わされてしまうものの、散り際にはオールマイトに見せつけるように手錠をかけられるポーズをとってみせた。これはおそらく「自分を捕まえたのはオールマイトだ」という意思表示であり、最期まで自分の生き方を貫きとおしたことが示されている。
もちろんステインが多くのヒーローを殺害した大罪人であることは、紛れもない事実だ。しかしその生きざまが作中に登場する多くの人々に影響を及ぼしたことも、否定はできないだろう。むしろ善と悪を超越して、“正しいヒーローのあり方とは何か”をひたすらに問い直した存在と言うべきかもしれない。
ある意味では作品のテーマを色濃く体現していた孤高のヴィラン・ステイン。今後『僕のヒーローアカデミア』を振り返る際には、もっとも重要なキャラクターの1人になるのではないだろうか。
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『僕のヒーローアカデミア
FINAL SEASON』
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