【漫画】”懐かない”猫になぜ夢中になる? 不器用な愛情表現が愛おしい『筆坊日記』

猫とは、マイペースに付かず離れず飼い主を翻弄する愛らしい存在だが、今回の主役である“筆坊”という黒猫は、ひと味違う。懐かず、甘えず、なんなら飼い主と対等に張り合うマインドの持ち主だ。
そんな筆坊の魅力がSNSで話題を呼び、2025年8月には書籍を発売。今後さらに筆坊ファンが増えていくことが期待される。今回はそんな筆坊の飼い主であり、『筆坊日記』の作者・夏宇さん(@720yushin)をインタビュー。筆坊との出会いや、制作の裏側について取材した。(はるまきもえ)
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振り切ったわんぱくぶりが作品の魅力に
ーー『筆坊日記』をXに投稿した際、反応はどうでしたか?
夏宇:Xのプロフィール文に「さっぱり懐かない猫の漫画です」と書いているのですが、読者の方からは「懐いてる」「のろけじゃん」というご感想をしばしばいただき、「それは誤解なんだ……待ってくれ……」と思っています。
ーーいち読者としては、筆坊からは遠回しの愛情を感じてしまいます(笑)。そんな本作の主役である筆坊ですが、どんな出会いだったのでしょうか。
夏宇:筆坊は保護猫で、子猫のときに出会いました。当時はなかなか声がかからなかったそうです。幼い動物は人間の庇護欲をくすぐる部分があると思うのですが、筆坊は人が嫌いで、弱みを見せず可愛げのない子猫でした。多分私は、その気の強さに惹かれたんだと思います。
ーー素敵な出会いですね。
夏宇:引き取ってからは、想像を絶するわんぱくぶりに驚きました。実は女の子なんですけど、悪ガキ少年にしか見えなかったです。
ーー筆坊のわんぱくぶりは、本作の魅力にもつながっていますよね。夏宇さんは以前はどのような活動をしていたのでしょうか。そこから「筆坊日記」を書くに至った背景について教えてください。
夏宇:以前、私は青年誌で根暗な漫画を描いていたことがあったのですが、パッとせず、制作活動からは遠ざかっていました。それから筆坊がうちに来て、あまりによそよそしくて寂しかったので、その愚痴日記を投稿しようと思ったのが最初のきっかけです。
ーー作品の中で技術的にこだわっている部分はありますか?
夏宇:そうですね……。こだわりは本当になくて、強いていうなら筆坊をモチモチした感じに見えるように描いていることですかね。今回紹介した作品の最後に収録されている「ディストピア飯」は、珍しく5ページも描いて疲れましたが、気に入っています。
ーー夜明けを一緒に眺めるかと思いきや、スタスタ行ってしまうところは思わず笑ってしまいました(笑)。なぜここまで反響があったと考えますでしょうか?
夏宇: 筆坊が自己中に振り切っているからでしょうか…本当に譲歩のじょの字もないのです。私からはそう見えていますが、筆坊からは「こいつは弱者だから加減してやるか」くらいはあるのかもしれません。
ーー改めて、夏宇さんから見て筆坊とはどんな存在でしょうか?
夏宇:ハイテンションな陽キャのようです。クラスにいた陽キャとは話せなかったけど、猫になったらこんな感じだったのかな? と想像しています。それでいて不器用で融通が効かないところもあって、たとえば虫に逃げられたとき、とっくに虫がいなくなっているのに「ここで消息を絶った……」と的外れな場所を探っている後ろ姿は可愛いなと思います。
ーーそんな『筆坊日記』は2025年8月に書籍化もされました。どういった思いを込めて制作されたのでしょうか?
夏宇:疲れたときやリラックスしたいときに、ふと本書を開いて「何言ってんだこいつら、バカだなぁ」と、頬を少しでも緩めてもらえたら嬉しいです。
ーー最後に、読者にメッセージをお願いします。
夏宇:いつも読んでくださり、ありがとうございます。コメントもとても嬉しく、日々支えられています。狼藉者ですが、これからも筆坊を見守っていただけたら幸いです。
























