【漫画】祖父が大往生、生前やっておかなかったことで後悔したこととは？　『ドタバタで葬儀場を決めて超お金がかかった話』

　昨今、高齢者だけではなくミドル世代の人も自身や家族の「死」について考えることが増えたのではないだろうか。NHK総合にて綾瀬はるか主演でドラマが放送された、カレー沢薫の漫画『ひとりでしにたい』も記憶に新しい。Xに投稿された『ドタバタで葬儀場を決めて超お金がかかった話』からも、終活は本人だけではなく、その家族も一緒に考えなければならないテーマだと感じざるを得ない。

　作者のカゲワサビさん（@AoiKageyama）が実際に体験した出来事を取り上げたエッセイ漫画となっている本作が、どのようにして生まれたのかなど、話を聞いた。（望月悠木）

続きを読むには画像をクリック

【漫画】『ドタバタで葬儀場を決めて超お金がかかった話』を読む

「誰かの役に立つのでは？」がきっかけ

――漫画制作に本作で取り組むようになったきっかけは何ですか？

カゲワサビ：会社員として働いていた20代半ば、「漫画家になりたい」と思いながらウェブ媒体で漫画を発表しつつも、日々の仕事に忙殺されていた時期がありました。ある日、YouTubeやPodcastで配信しているお笑い芸人・ウエストランド（井口浩之・河本太）のラジオ形式のトーク番組『ウエストランドのぶちラジ！』で当時の状況について相談したところ「漫画家に挑戦しろよ！今やらないと一生後悔するぞ」「通用すると思ってるから踏み出せないんだよ。通用しないと思えば踏み出せるから！」というような言葉を井口さんからいただき、その言葉をきっかけに会社を辞め、以後はプロを目指して本格的に漫画制作を始めました。

――なぜ今回『ドタバタで葬儀場を決めて超お金がかかった話』を制作したのですか？

カゲワサビ：身内の急な葬儀を経験した際、想像以上に金銭的にも精神的にも混乱し、「こういう話こそ誰かの役に立つのでは？」と思って制作を決めました。

――カゲワサビさんが体験したノンフィクション作品なのですね。

カゲワサビ：はい。基本的には私自身の実体験をもとに描いています。ただ、情報の整理や物語としての面白さのため、一部エピソードを簡略化したり、キャラクターの感情を誇張させたりといった編集的なフィクションは含まれています。

――本作を制作する際、当時の出来事を思い出しながら制作したのですか？

カゲワサビ：当時は本当にバタバタしていたのですが、「何かの役に立つかもしれない」という気持ちから、スマートフォンのメモアプリに記録を残していました。そのメモを見返し、当時の記憶と感情を再構成しながら制作しました。

面白さと情報のバランス

——本作は「葬式でとてもお金がかかった」ということを端的かつ丁寧に描かれていることが印象的でした。

カゲワサビ：まず「難しいことを難しく描かない」ということを意識しました。情報量が多くなると読者が疲れてしまうため、1コマ1情報を基本にして、言葉もなるべく平易にしています。セリフも「実際に誰かに説明するなら」という視点で整え、読者の感情に寄り添えるよう構成しています。

——エッセイ漫画としての面白さも感じられました。面白さと情報のバランスはどのように調整しましたか？

カゲワサビ：エッセイ漫画としての“共感”や“驚き”は損なわれないよう、描きたい情報を「感情の動きと紐付けて描くこと」を大事にしました。単に「○○円かかった」と書くのではなく、「何にどう困って、どう選ばざるを得なかったのか」という背景を含めて伝えることで、「情報が物語として読まれるように」と心がけています。

——本作にはさまざまな人の声も寄せられていましたが、印象的な反応はありましたか？

カゲワサビ：「急に決めないといけない状況になるのわかる」「同じような経験をしたのでみんなもこの話を読んでほしい」といった声が多く、共感や感謝の言葉に私自身も救われました。また、「こんなにお金がかかるとは思わなかったので、両親と話しておきます」といった“行動につながる反応”もあり、「描いて良かった」と心から思いました。

——改めて誰かが亡くなった時のための“備え”として、必要だと思うことを教えてください。

カゲワサビ：元気なうちに家族と一度「もしものときどうする？」と話し合っておくことが何より大切だと感じています。また、終活ノートなどに希望や連絡先をまとめておくと、残された側が助かる場面が多いです。話しにくいテーマですが、だからこそ、一度は軽い気持ちで話す機会を作ってほしいと思います。

――今後はどのような作品を制作していこうとお考えですか？

カゲワサビ：商業誌向けに読切漫画の準備を進めつつ、自身の体験や社会的テーマを扱ったエッセイ漫画も発表していきたいです。また、今後は“情報×エンタメ”の中間のような、「読んでいて面白く、かつ誰かの助けにもなる」という作品をもっと増やしていきたいです。SNSでも作品を順次公開予定ですので、ぜひ見てもらえると嬉しいです。

【漫画】『ドタバタで葬儀場を決めて超お金がかかった話』を読む

■カゲワサビ
X(旧Twitter)：https://x.com/AoiKageyama
WEB漫画掲載サイト「カゲワサビのWEB漫画！」：https://kagewasabi.blog.jp/
リンク集：https://potofu.me/kagewasabi