シャアの誕生からララァとの出会いまで……『ジークアクス』の次に触れたいガンダム漫画『THE ORIGIN』

■安彦良和の考えた「ニュータイプ」論とは
同作ではシャアだけでなく、ララァについても『ファースト』以上に詳細な過去が描かれている。
同作のララァは一年戦争が始まる前、ジャブローのカジノでイカサマの道具としてニュータイプ能力を使わされていた過去をもつ。そんな彼女はシャアとの出会いをきっかけに、外の世界へと連れ出されるのだった。
また、同作のララァは“恋する乙女”としての一面が強調されており、シャアはさながら“白馬の王子様”といった立ち位置だ。『ファースト』とは異なるキャラクター像なので、好みは分かれるかもしれないが、その愛らしさは一見の価値がある。
そのほか『ジークアクス』の主要人物だったキシリアや、最終話にちらっと出てきたアルテイシアやランバ・ラルについての掘り下げも行われているので、興味深く読めるはずだ。
その一方、作者の安彦は2020年に「朝日新聞デジタルマガジン&」に掲載されたインタビューにて同作に言及し、「ニュータイプ」という概念を捉えなおすという執筆動機があったことを明かしていた。※1
ニュータイプといえば『ガンダム』シリーズの中核にある概念で、基本的には人類の革新、新たな未来の可能性として提示されてきた。しかし安彦は決してニュータイプ思想を楽観的に信奉しておらず、むしろその危険性を直視する形で描き出している。
『ジークアクス』から興味をもった人はもちろん、『ガンダム』ファンにもさまざまな示唆を与えてくれる『THE ORIGIN』。同シリーズの他作品を楽しむ上でも、大いに役立つはずなので、ぜひ一度触れてみてほしい。
※1 「『僕はニュータイプを決して支持しない』 ガンダムは歴史そのもの、続編に興味はない 安彦良和のTHE ORIGIN(後編)」(https://www.asahi.com/and/m/article/15795274)
























