〈坂道グループ写真集〉なぜベストセラー連発? 異例のヒットを支える「プロモーション戦略」を分析

坂道グループ写真集プロモーションの巧みさ

 出版不況が叫ばれるなか、乃木坂46、櫻坂46、日向坂46といった坂道グループの写真集が、オリコンランキングの上位を常に占めている。写真集市場において、もはや一つのジャンルを築いたと言っても過言ではない。

 乃木坂46の5期生写真集『あの頃、乃木坂にいた』は2024年の上半期だけで11.6万部を売り上げ、写真集部門で1位に。山下美月の2nd写真集『ヒロイン』も11.3万部を記録し、女性ソロ写真集部門のトップに立った。過去には賀喜遥香の1st写真集が18.8万部の大ヒットを飛ばし、2022年の年間ランキングを席巻したこともある。

SNS、リアル書店、ライブ会場…プロモーションの幅広さ

 こうした現象は偶発的なヒットではない。発売前から数ヶ月にわたるティザーキャンペーン、バリエーション豊富な店舗別特典、ライブ配信での特典付き販促、そして書店・ライブ会場を巻き込んだオフライン施策など、そのすべてが連動し、写真集をファンとの一体感を得るイベントに変えている。こうした多層的かつ連続的な仕掛けの積み重ねは、SNS時代のファンダムに最適化されたプロモーションの完成形とも言えるだろう。

 坂道写真集プロモーションの出発点となるのが、発売約2ヶ月前から始まるX(旧Twitter)での専用アカウント運用だ。たとえば、井上和の1st写真集『モノローグ』公式アカウントでは、発売前から日々「先行カット」「オフショット」そしてショート動画が投稿され、投稿のたびにファンの間で話題を呼んだ。筒井あやめの1st写真集『感情の隙間』アカウントも同様に、撮影地での動画や「#あやめさんぽ」と題したシリーズ投稿を展開。1日1カット、1分の動画すらが、ファンにとってはイベントとして共有されていく。

 この手法は、日々タイムラインを消費するSNS世代に合わせて設計されたものだ。単発の大きなニュースではなく、小さな断片を積み重ねて“関心の滞在時間”を引き延ばしていく。それは、ニュース記事のPVを伸ばす目的というよりも、写真集そのものがすでに始まっている感覚を与え、ファンを自然に“参加者”へと巻き込んでいく導線設計に他ならない。実際、井上和の1st写真集『モノローグ』は発売後もアカウントが継続され、未公開カットが随時アップされており、継続的な話題提供を行っているのだ。

 SNSだけでなく、SHOWROOMでのライブ配信も、現在の坂道写真集には欠かせないパーツだ。岩本蓮加、小林由依といったメンバーが、発売前後に配信を行い、撮影時のエピソードや写真への思い入れを語る。加えて、配信視聴者限定での特典が設けられていることも多い。櫻坂46・小林の2nd写真集では、配信中に話題となった「未掲載のスイカを食べるショット」がSHOWROOM限定ポスターとして封入された。

 

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