【漫画】絵にすべてを懸けていた先輩はなぜ変わった? ちょっぴりホラーなSNS漫画『普通の大学に行った先輩』

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
金属8g:本作の前に大学の卒業制作で、『Return 0』という漫画を描いたんです。『Return 0』をSNSにアップしたとき、ありがたいことに出版社の編集者さんにお声がけいただきました。
編集さんと話しているなかで、「もっとシンプルな設定の話がいい」とアドバイスをもらいました。そこでシンプルな設定を心がけて、制作したのが本作です。
ーー本作に関するコメントには、駅名が不穏に感じるというものもありました。
金属8g:先輩が降りた駅は「クチナシ」ですが、この駅名は一応ダブルミーニングになっています。1つ目は、植物である「クチナシ」の花言葉である「幸せ」というような意味です。先輩が“幸せ”で降りていくことを表現しています。
2つ目は、「死人に口なし」の言葉に由来する意味ですね。こっちでは、アカリの知っている先輩はもういないこと、先輩がアカリの人生からフェードアウトしたことを表現しました。
コメントで不穏だと書いていただいたのは、おそらく「死人に口なし」からだと思います。
ーーラストページに登場した駅名にも、意味はありますか?
金属8g:アカリの目的地であるラストページの駅「きさらぎ芸術工科大学前」の由来は、有名な都市伝説の「きさらぎ駅」です。元々ラストページは何もセリフがなかったのですが、さすがに画が寂しい気がしたので、駅名を考えて吹き出しを追加しました。
この駅名で若干ホラーエンドになってしまう不安もありましたが、脱出できない「きさらぎ駅」由来の名前にすることで、この話は先輩だけが悪いのではなく“抜け出せない創作地獄”に先輩を引きずり込もうとしてたアカリもイーブンだよね、という印象にできたのではと思っています。
ーーセリフの前後に多く見られる三点リーダーから、緊張感が伝わってくる印象がありました。
金属8g:私自身人と会話するのがあまり得意ではなくて、話しているときも言葉が途切れ途切れになることがあるんです。
本作の主人公も、コミュニケーションが得意なタイプではないと思います。会話が得意ではなくても頑張って言葉を紡ごうとするリアルな雰囲気を出そうとすると、三点リーダーが多くなるんです。私が漫画を描くうえでの、手癖のようなものだと思います。
ーー金属8gさん自身が気に入っているポイントは?
金属8g:やっぱり小説ではなく漫画で描くからこそ、セリフだけでなく表情で感情が伝わるよう意識して制作しました。例えば、アカリが「…先輩が元気そうでよかったです」と伝えたときの先輩の表情は、なんとも言えない感情が上手く表現できたかなと思っています。
ーー絵を描き始めたきっかけを教えてください。
金属8g:絵を描くのは昔から好きで、小学生の頃から「月刊コロコロコミック」で連載されていた「カービィシリーズ」の絵なんかを描いていました。
ーーやはり上手な方は、子供の頃から絵を描いているイメージがありますね。
金属8g:今っぽい絵柄のイラストは、結構ノウハウが確立されているので、大人になってから描き始めた方でも上手くなれると思います。
ただ、私はまだまだですが個性的で絵に自身の色が出ている作家さんは、小さい頃から描いている方が多い印象です。個人的には、技術的な部分を考えすぎず描いていた頃の癖が上達しても残っていて、個性に繋がっているのかなと感じますね。
ーー最後に、今後はどのような漫画を描きたいですか?
金属8g:本作は、人と人の関係に踏み込んだ漫画でした。前作の『Return 0』に至っては、自分が人と関わるのがあまり上手くなくて、そのなかで失敗したことをテーマにした作品なんです。
なので、今後も人と人の交流を中心に、自分自身の感情をなるべく漫画に落とし込んでいけたらいいなと思っています。






















