子育てインフルエンサー・木下ゆーきに聞く、歯みがきを楽しくする方法「子どもがワクワクするものに見立ててあげて」

木下ゆーき『はぶらしロケット』誕生の背景

「絵本を通じて『いっしょに頑張ってるよ』っていうエールが送れたら」

――今後、第2弾、第3弾と絵本シリーズが展開されていくとお聞きしました。

木下:はい。第2弾は『へんしんレストラン』、第3弾はトイレテーマで、それぞれ今年の7月と9月に発売される予定です。

 『へんしんレストラン』は「ご飯を食べてくれない」という悩みに対して「こうしたら結構楽しく食べてくれました」という我が家でも実践してきた“不思議なレストラン”をテーマにした絵本です。やっぱり僕自身も苦労してきたテーマにしていくので、ちょっとでも同じ悩みに奮闘している人たちの気持ちが楽になればいいなと思って作りました。

 ただ、この『はぶらしロケット』もそうですが、本当に心と時間に余裕がないとなかなかできることでもないので。あんまり「こうしなきゃいけないんだ」「なんでうちはできないんだ」なんて思わないでほしいです。いつかタイミングがあえば真似してみようかな、くらいに頭のどこかにしまってもらえたらと思っています。

――現代は子育てに関する情報も溢れていて、たまたまその子に「合わなかった」ということも「できなかった」みたいな否定に捉えてしまう方も少なくないように思います。

木下:ありますね。僕も、子どもがおもちゃを散らかしたときに運動会の曲を流しながら「さあ、始まりました! 全日本かたづけ競争です!」って実況を始めると必死になって片づけてくれるっていう動画を上げたことがあるんです。それがありがたいことにバズって「うちもやろう」ってコメントがつきましたけど、うちだって毎日やっているわけではないですから(笑)。

 本当に心と時間に余裕のあるときだけ。具体的に言ったら年に1回か2回くらいですよ。普段は、もう真顔で「はい、もうおもちゃ全部捨てるよー」って。最近は「脅し言葉はいけません」みたいなことを言われますけど、言っちゃう言っちゃう! 本当にみなさんと一緒なんです。第4弾は『お片づけ運動会』なんてタイトルでワクワクさせておいて、1ページずつめくるたびに「はい、1つずつおもちゃ捨てまーす」っていう怖い話になっちゃうかも(笑)。

――(笑)。でも、本当にお片づけ編もほしいと思われる方もたくさんいらっしゃると思います。私も個人的な悩みを相談してもいいですか?  この前ベビーカーに乗せたら「歩く!」と言い出して、下ろして歩かせようとしたら「歩かない!」って言われて……。

木下:あー、それもあるあるですよね。やっぱり気をそらせるというのは、使える手かなと思っていて。例えば、道路にもいろんなタイルとか線とかあるじゃないですか。それを踏んだら「ドン!」とか「シャキーン!」と面白い音を口で鳴らすんです。子どもが食いついたら「じゃあ、あっちはどんな音がなるかな?」と進んでいくように仕向ける。「歩くか歩かないか」ではなくて、「どんな音が鳴るか」というゲームにすり替えて、結果的に歩いているみたいなことはやったことがありますね。

――わー、さすがです! これもぜひ絵本にしていただいて(笑)。

木下:でも、それもやっぱり心と時間に余裕のある時ですからね。そうじゃないときは、ギャンギャンいう子どもをもう米俵みたいに抱えて歩きますから。

――でも、こちらがやってほしいことを、相手が興味を持ったり、気分よく対応できる形で伝えるというのは、普段のコミュニケーションのコツとしても使えそうですね。

木下:そうですね。よく仕事仲間にお願いをするときも、「これやって」ではなく「これ助けてくれない?」という言い方をしたりしています。「やって」だとちょっと上から指示されるような印象があるかなと思って。でも、「助けてくれない?」なら自分が求められているような気持ちが芽生えそうだなと。

――なるほど! それはすぐにでも使えそうですね。

木下:でもこの前、妻にあるお願いをしたんですよ。僕はキッチンの収納でボールやザルを大きさ順に揃えて片づけたいんですけど、妻が使い終わった順に重ねるタイプの人で。「大きさがバラバラになっていると取り出しづらいから揃えてくれない?」とお願いしたんですよね。そしたら、手を合わせて「ごめん、揃えられない!」って。あまりにも清々しいので、「了解了解!」って思わず笑っちゃいました。

――全部が思い通りになる魔法の言葉なんてないんですね(笑)。でも、そんなチャーミングで穏やかなやりとりの積み重ねが、子育てを楽しむ余裕を生むきっかけにもなりそうですよね。最後に、この絵本を手に取るであろう子育て中のみなさんにメッセージをお願いします!

木下:子育てって、今日うまくいったからっといって、次の日も同じようにうまくいくとは限らないのが大変なところですよね。そんなときに、引き出しのひとつとして僕の絵本を「これはうまくいくかな?」と試していただいて、それがひとつでもハマってストレスが少しでも減ってくれたらいいなと思っています。

 だから、あまり気負わずに。たとえ、うまくいかなくても「自分がダメだ」なんて思わなくていいです。そんな日は低気圧かなんかのせいにして、気持ちを切り替えていきましょう。僕もうまくできない日のほうが多いですから。この絵本を通じて「いっしょに頑張ってるよ」っていうエールが送れたらうれしいです。

■書誌情報
『はぶらしロケット』
著者:木下ゆーき
イラスト:uwabami
価格:1,430円
出版社:Gakken

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