小説家・今村翔吾 2024年に読んだおすすめ書籍3選「資料として購入したけど面白すぎた本」の内容とは?

モチベーションを保つコツ
――その無尽蔵のモチベーションは、どこから来るのでしょう。
今村:これは皆さんがおっしゃることかもしれませんが、ある程度欲しいものを手に入れても飽きてしまうんです。人と出会うこと、誰かと何かをやる喜びにはまるで勝てません。そういった意味では、自分にとって趣味の延長線にあるようには感じます。そのうえでモチベーションを保つコツとしては、次の次の目標まで常に考えていくことでしょうか。例えば直木賞を獲る前にその次を考えていたことで、ロスに陥りませんでした。会社で言うところの事業計画のようなものかもしれませんが、先々にワクワクする計画をアンカー的に配置しておき、その連鎖でここまで来たように思います。
自分は元々フットワークが重いタイプでしたが、作家になって残りの人生が30年あるかないかと思ったらこのままではダメだ、勿体ないと思って動くようになりました。誰もがやっていないことをやりたい、誰も観たことのない景色を見たい、せっかく生まれた限りは「あいつが生きてきたことによって何かが変わった」と言われるようにして死んでいきたい。こうした想いは、歴史小説家だからかもしれません。
"覚悟"のために購入した、池波正太郎のサイン本

――最後になりますが、2024年を象徴するアイテムを教えて下さい。
今村:池波正太郎先生が師匠である長谷川伸さんに贈った『夜の戦士』のサイン本です。長谷川さんの教えがあったから池波正太郎が生まれ、池波先生がいたから今村翔吾が誕生したと僕は思っていて、そうした意味でいうと僕にとって原点となるようなものを入手できました。
大谷翔平選手がWBCで「憧れるのをやめましょう」とおっしゃっていましたが、僕も同じ気持ちです。師匠たちをずっと尊敬はしていて憧れの気持ちが強くありましたが、これからは歴史小説が一番盛り上がった世代にも挑んでいかなければならない、という覚悟を込めて仕事部屋に飾っています。
プロフィール
今村翔吾
1984年、京都府生まれ。ダンスインストラクター、作曲家、守山市での埋蔵文化財調査員を経て、専業作家に。2022年に『塞王の楯』で第166回直木三十五賞を受賞。2021年11月には大阪府箕面市にある書店を事業承継し、『きのしたブックセンター』のオーナーを務める。