サッカー漫画、人気キャラだけでU-23日本代表チームを作ったら? ディフェンダー編

 4年に1度のスポーツの祭典、夏季オリンピックが来月開幕される。特にオリンピックの中でもサッカーは注目度が高いスポーツである。世界的なメジャースポーツであり、わが国でも人気があるため、日本を代表するポップカルチャー・漫画でも頻繁に題材になる。サッカーの華はやはり得点なので、得点に絡むことが多いポジションの選手が主人公の場合が多い。登場人物のほとんどがFW(フォワード)を本職としている『ブルーロック』など極端な例だろう。オリンピックの代表は前述のとおり、基本的には23歳以下なので、メンバーを組むならサッカー漫画の主人公は相性がいいのではないだろう?

 今回は「サッカー漫画の主人公だけでU-23チームを作ったらどうなるか?」を前回に続きディフェンダーで考えてみることにしよう。

※日本代表は3バックと4バックを併用しているが、今回は4-2-3-1フォーメーションを前提にメンバーを組んでいる。

■DH(ディフェンシブハーフ、ボランチ)

『フットボールネーション 』沖千尋 18歳

『俺たちのフィールド』高杉和也 20歳(代表招集時)

 沖は社会人のアマチュアクラブでプレーする選手だが、国内のトッププロに匹敵するフィジカルとテクニックの持ち主。劇中ではアマチュアクラブの所属ながら天皇杯でJ1のチャンピオンを破って優勝する快挙の立役者になった。視野が広く、サッカーIQにも長け、少年院入りがなければユースからエリートコースに乗っていたことだろう。『フットボールネーション 』は作者の大武ユキ氏の体調問題で休載がちだが、その後の沖のキャリアがどうなるか気になるところである。

  和也は強靭なフィジカルと無尽蔵のスタミナとゲームメイク能力とパンチ力を兼ね備えた選手で、遠藤航(リヴァプール/日本代表)に無尽蔵のスタミナとパンチ力を足したような選手である。まだJリーグが開幕する前にアルゼンチンでプロデビューし、Jリーグ、日本代表、イタリアでキャリアを積んできた若いながらも経験豊富なプレーヤーだ。和也はフランスワールドカップ後にイタリアの古豪・フィオレンティーナに移籍してレギュラーに定着しているが、おそらくその時点でもまだ20代前半だったのではないだろうか。熱血漢のムードメーカーでその点でもチームにプラス要素をもたらしてくれることだろう。

  和也はスイーパー(センターバック)、フォワード、攻撃的MFもこなせるユーティリティープレーヤーなので、カードももらわず、怪我もせずにフィールドに居続けてくれた場合、突然のフォーメーション変更にも柔軟に対応できる。その場合、『フットボールネーション 』の劇中でもやっていたが沖のソロピボーテで対応する形になる。沖、和也のダブルボランチはかなり強力で、攻守両面で機能することだろう。問題は、守備的MFができる選手が他にいないため、不慮の事態が発生したときに代案がないことだ。このチームはDFも泣き所だが、守備的MFも泣き所である。とにかく層が薄い。

  本格派サッカー漫画、『GIANT KILLING』は監督の達海猛が主人公だが、プレーヤー側の主役は椿大介で、彼を主人公と解釈できなくもない。俊足と豊富な運動量が売りの選手で、まだ20歳だが劇中で代表にも呼ばれている。トップ下、ボランチ、サイドバックでプレーできるので、椿を主人公と解釈できるなら層の薄さを多少は解消できる。

■SB(サイドバック)

LSB(左サイドバック):『アオアシ』青井葦人 16歳(高校一年生の設定)

RSB(右サイドバック):『マネーフットボール』梶本洋平 20歳

  サイドバックが主人公の漫画は二つしかなく、選択肢が無い。チームを組むうえでは都合のいいことに、梶本が右サイドバックで葦人が左サイドバックだ。少なくとも本来のポジションでないところで起用する必要が無いのが救いだろうか。

  梶本は国内2部リーグでプレーする選手。俊足で走行距離も長いが、劇中で示されるデータが2部リーグの並みのレベルの選手であることを示している。一部リーグのクラブからレンタルされている設定だが、レンタルバックされないことがその実力を物語っているのだろう。『マネーフットボール』はデータ分析を積極的に取り入れた斬新な内容だったが、残念ながら連載は短命だった。後述する『ナリキンフットボール』も『蒼のアインツ』も連載は短命だった。マニアックすぎる内容の漫画はあまり一般に浸透しないのだろう。いずれも意欲的な作品だったので、個人的にはもっと読みたかった。

  葦人はピッチ全体を俯瞰できるイーグルアイの持ち主、という明確に強力な長所あるのだが、フィジカル、テクニックはユースレベルで、ワールドクラスを相手にする場合明確な穴になってしまう。とはいえ、この二人以外に選択肢が無いのも確かなのがこのチームの辛いところである。

  人材が手薄すぎるため、左ウィングバックもできるてっぺいを左サイドバックに回す手も無くはない。このチームは守備に関しては期待できないため、むしろそのぐらい前のめりで攻撃的になった方が良いかもしれない。その場合、バランスの問題(左右の能力差)が発生してしまうが、このチームはもともとバランスに問題があるためそれは目を瞑るしかないだろう。3バックのフォーメーションになった場合は、葦人と梶本は控えに回すことになる。その場合は、ウィンガーもできる、またはウィンガータイプにも化けることができるてっぺい、トシ、シーナをウィングバックにまわしてしまうのも手だろう。

  現実世界でもオレクサンドル・ジンチェンコ(アーセナル/ウクライナ代表)は所属クラブではサイドバックを主戦場にしているが、本来は中盤の攻撃的なポジションの選手で、代表では攻撃的ポジションが主戦場である。アルフォンソ・デイヴィス(バイエルン・ミュンヘン/カナダ代表)も所属クラブではサイドバックだが、本来はウィンガーでカナダ代表ではそちらが主戦場である。トレント・アレクサンダー=アーノルド(リヴァプール/イングランド代表)は典型的な攻撃型サイドバックで、守備に難があることは承知の上で起用されているのは攻撃性能が高いからだ。この三人はディフェンダーだがいずれも守備に難があり、サッカー漫画の主人公の日本代表も守備には目を瞑って、FWや中盤の攻撃的な選手をサイドバックに回してしまうのも手だろう。

 『LOST MAN』の主人公、マツモトは全ポジションでプレーできるユーティリティープレーヤーで、はっきりサイドバックでプレーしている描写があったが、代表資格があるか不明確(国籍、年齢ともに不明)なので泣く泣く除外した。

■CB(センターバック)

CB(センターバック):『Mr.CB』千明明 18歳

CB(センターバック):『カテナチオ』嵐木八咫郎 18歳

CB(センターバック):『ナリキンフットボール』鼓屋我王 23歳

 このポジションも泣き所である。明は国内3部リーグデビューしたばかりの新人、嵐木はイタリアの育成チーム(U-19)所属で、国内1部リーグ以上のレベルでプレーした経験があるのは我王1人しかいない。

  明はボディバランスがよく空中戦が得意という明確な強みがあるが、あくまでも3部リーグレベルの話であり心もとない。嵐木は足元のテクニックがいまいち、足が遅い、フィジカルが強靭、サッカーIQが高い、狡賢い、無尽蔵のスタミナの持ち主という明確な強みと弱みを両方持っているが、まだ育成チームの選手である。

  劇中では嵐木もラインの上げ下げを細かく指示する場面があったが、経験値を考えるとディフェンスを統率するのは我王の役目だろう。

   我王はテクニックもフィジカルも特筆するものは無いが、腐っても1部リーグ優勝メンバーの一人である。特に味方を使う統率力、サッカーIQに長けており、我王のコーチングは試合でかなり重要な要素になりそうである。3バックで行く場合はこの3人でとりあえず組むことになるが、4バックの場合、我王と誰を組ませるかも問題になるだろう。素直な性格の明はわざわざ我王に反目すると思えないし、嵐木は癖のある性格だが合理主義者なので納得すれば聞くだろう。そうするとよりコンディションの良い方を起用している運用になるだろう。

  また、これはオプションだが、『BE BLUES!〜青になれ〜』の主人公、一条龍はリベロで出場したことがあるので、守備を度外視して龍をCBに回すのも一つの手だ。このチームは攻撃こそ最大の防御のようなチームなのでむしろその方が上手くいくかもしれない。復活後の本来の姿を取り戻した龍は、ゲームメイクもできるテクニシャンとして描写されていた。若くしてドイツ1部リーグでプロデビューしたほどの逸材なので、ジョン・ストーンズ(マンチェスター・シティ/イングランド代表)のような偽センターバックとしての振る舞いも期待できる。攻撃こそ最大の防御がこのチームなので、適切な人材運用かもしれない。

 『超機動暴発蹴球野郎 リベロの武田』の主人公、武田弾丸も一応、CBの主人公だが同作はギャグ漫画で真面目にサッカーをやっていない場面も多い。現実問題として身長147cmの武田では頭上をボールが通過していくのがオチだろう。プレーも高校レベルなので、彼を起用する選択肢をとるのは難しいだろう。(ギャグ漫画の『リベロの武田』にそのようなことを言うのは野暮かもしれないが)

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