カルト団体のマーケティング術はビジネスにも応用可能なのか? 人の心の脆弱性を突いたその手法とは
今書いたように、おそらくカルト・マーケティングの本質的に危険な部分の一つは「うまくハマると楽しく面白い」という点である。楽しい、面白いと感じるからこそ、カルトにハマった人は金だけではなく時間や労働力や自分の人間関係まで差し出し、骨までしゃぶられても被害に気がつかない。なんせ本人は「自分は普通の人間とは違うし、まわりには仲間がいるし、敵と戦っているし、勝利や成功のために努力している」と思い込んでいるのだ。こんなに気持ちよくて楽しいことはなかなかないだろうし、この楽しさを捨てて日常に戻るのが相当難しいことは想像がつく。金も時間も労働力も人間関係も、全部差し出してしまった後ならばなおさらだ。
カルトのマーケティング手法を解説したビジネス書として書かれている本書だが、読み方によっては「カルトはこういった手法を使ってくる」という具体的なテクニック集としても読める内容だ。また、「大切な人が悪質な集団や思想に取り込まれてしまったら」という章が用意されており、カルトにはまり込んだ人への対処法も記されている。現代ではYouTubeやSNSなどネット上にもカルトへの入り口が数多く開いている昨今、カルト対策入門書として本書を読んでおく意義は大きい。ビジネスに活かすもよし、自分を引っ掛けようとしてくるカルト団体から身を守るために読んでもよしという、一冊でふたつの使い道があるお得な書籍である。