『虎に翼』脚本家・吉田恵里香インタビュー 「今も解決していない問題を時間をかけて描きたかった」
後半は残念ながら解決していない問題が大半
ーー『虎に翼』は現在放送中ですが、序盤がスピード感があったのに比べ、戦後の物語はゆったり進んでいるように感じます。これは意図的なものでしょうか。吉田:戦前にあった差別の大半は解決しているというか、多くの人がそれはダメだということを認識していますので、それに対して悩んだり解説するよりもテンポよくやっていくことを重視しました。
逆に後半は残念ながら解決していない問題が大半なので、時間をかけて悩みをちゃんと描いていきたいと考えたんです。題材として詰めていくと、令和になって生まれた問題ではなくて戦前からあるものばかりなんです。今も解決していないってどういうこと? と思って、調べれば調べるほど、そこは書きたいなというのはありました。
後半も、もうちょっと戦前のテンポ感というか、爽快感が出るかなと最初は思っていたんですが。あまりにも解決していないことばかりで、これをテンポよく書いてしまうとあまりにも軽率だなと考えて、緩急を変えたんです。
※ ※ ※
吉田さんは「あと3ヶ月ぐらい放送があってもよかった」とも言っていた。それだけ『虎に翼』は多くのものを内包した作品だったのだろう。
吉田さんが言ったように、『虎に翼』で描かれた問題は、今も解決していないものが多い。『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集』は作品世界を楽しむだけでなく、あらためてそれらの問題に向き合うためにも、うってつけのテキストになりそうだ。
■プロフィール
吉田恵里香(よしだ・えりか)
1987年生まれ。神奈川県出身。主な脚本執筆作に2024年度前期NHK連続テレビ小説『虎に翼』、映画『ヒロイン失格』、ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』『君の花になる』『生理のおじさんとその娘』などテレビドラマから映画アニメまで数々の作品の脚本を手がける。ドラマ『恋せぬふたり』で第40回向田邦子賞・第77回文化庁芸術祭優秀賞を受賞。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』で第9回Anime Trending Awards(ATA)最優秀脚色賞を受賞。執筆した小説に『恋せぬふたり』(NHK出版)などがある。
※紙版の『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集』は予約受付終了、電子版のシナリオ集は好評販売中」