豪雨、氾濫、巨大地震による液状化ーーもしもの時、東京どうなる? 古地図が示す災害リスク

■液状化現象が発生するリスク

延宝三年(1675)の江戸全図。中央辺りにある西御丸、御城というのが現在の皇居。日比谷周辺は江戸時代に埋立られた地域であった。(出典:国立国会図書館アーカイブ)

 8月8日、宮崎県周辺で最大深度6弱を記録する地震が発生した。気象庁は南海トラフ地震臨時情報を発表し、お盆前の日本列島に衝撃が走ったことは記憶に新しい。南海トラフ地震は地震学者から「いつ起きてもおかしくない」と言われて久しいが、発生した場合は関東大震災をはるかに凌ぐ規模の被害が出るといわれる。

 人々の間に防災意識が高まりつつあるが、首都圏のスーパーでは米を買い占める客がいて、慢性的なコメ不足に陥っているようだ。そもそも、首都圏は安全なのだろうか。南海トラフ地震、さらには首都直下型地震に見舞われた際に、生き残るにはどこに住めばいいのだろうか。

 率直にいえば、東京は“都心部はどこも危ない”と言わざるを得ない。都心部は地盤が軟弱な場所が多いうえ、もっともリスクが高いのは液状化である。液状化とは地面が液体状に柔らかくなってしまう現象を言う。今年1月1日に発生した能登半島地震でも液状化が起こったが、最悪の場合、鉄筋コンクリート造のマンションでも傾く可能性がある。

 東京都建設局が発表した「東京の液状化予測図 令和5年度改訂版」をもとに液状化予測図を見てみると、中央区、大田区、港区、江戸川区、葛飾区、足立区……など、かなり広範囲にわたり「液状化の可能性がある地域」あるいは「液状化の可能性が高い地域」になっている。特に、東部の荒川や隅田川沿いのほか、海沿いの地域が液状化のリスクが高いようだ。

東京都建設局『東京の液状化予測図 令和5年度改訂版』より。ピンクは絵液状化の可能性が高く。黄色は液状化の可能性がある地域だ。東京の東側である埋立地は高いリスクが示されている。

 江戸時代の古地図と現代の地図を比較してみるとわかるが、東京は江戸時代から現代にかけて、埋め立てが進められてきた。そのため、以前から地盤が軟弱であると指摘されている。なお、東京都建設局の予測は首都圏直下地震など特定の地震に対する可能性を示したものではないとされているものの、日頃の備えや、これから家を購入する場所を検討する際に役立てる価値はあると思われる。

 埋め立てによって誕生した地域では、過去に何度も液状化現象が発生している。2011年に東日本大震災が発生した際には、千葉県の浦安周辺では液状化現象が発生した。そのため、首都圏直下地震が発生した場合、東京湾周辺で液状化が発生する恐れは以前から指摘されている。

 東京は川が多いため、集中豪雨で川が氾濫するリスクも抱えている。2019年、令和元年東日本台風(台風第19号)で多摩川の河川水位が著しく上がってしまい、世田谷区周辺から田園調布、川崎、武蔵小杉に至るまで広範囲で水害が発生したのは記憶に新しい。今年8月にも首都圏を襲ったゲリラ豪雨で、市ヶ谷駅の駅構内が池のようになり、渋谷や代々木、新宿が冠水した。大規模な水害に見舞われる危険性とは常に隣り合わせなのだ。

■木造住宅の密集地域は要注意

東京は密集地帯が多く、木造住宅が乱立するエリアも多い。江戸時代から東京は災害のリスクがあることを忘れてはいけない。写真:photolibrary

 また、荒川区、墨田区、足立区のエリアは木造建築が多いため、火災に対して弱いと言われる。1995年に発生した阪神淡路大震災でも木造建築の密集地帯で、建物の倒壊や火災の発生があった。古い木造建築や雑居ビルは現在の建築基準法の基準を満たしていない建物も多く残っていると考えられ、倒壊の危険性は大いにあるといえるだろう。

  住まいをどこに構えるのか。利便性を考えるか、それとも安全性を考えるか。難しいところだが、はっきり言って日本は災害列島と言ってよく、近年の傾向を見ると安全な場所はそもそも存在しないのではとすら思えてくる。災害は忘れた頃にやってくる。むしろ、安全な場所はないと考えることで、日頃から防災への意識を高めることの方が命を守るうえでは大切なのかもしれない。

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