【漫画】「おまえ、つまんなそうに食うよな」ーー感情が表に出づらい男が最高のケーキに出会うSNS漫画に共感

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

コメヒコ:本作は雑誌へ投稿するために描いた作品です。本作を描く前に壮大なファンタジー作品を制作したのですが、あまり良いものができず……。そのため次はありふれた日常を舞台に、ちょっとしたことで誰かを救う話を描こうと思い本作を創作しました。

ーー喫茶店を題材にした理由は?

コメヒコ:喫茶店が好きだからです。漫画を描くにあたって純喫茶、古い喫茶店を舞台にしたいと思いました。また構想の初期から疲れたお兄さんと疲れたおじさんが出会う話がいいと考えていました。

 男性2人の物語なので少しBLっぽい感じにもしようかと思いましたが、投稿する雑誌のイメージもあり、幅広い層の読者が楽しめるよう今の形に落ち着きました。

ーー印象に残っているシーンは?

コメヒコ:本作の最後、喫茶店のオーナー・佐藤さんが「ちゃんとうまくいくって」と言うシーンです。本作を描くにあたり、構想時からこの台詞は描きたいと思っていました。

 私自身が漫画家になりたいと思いつつも将来への大きな不安があり、かといって周りに相談できず孤独を抱えていました。そんな自分を励ますために、自分が描いた漫画を読み返してみて「大丈夫かもしれない」と思えるような作品にしたいという思いから、このシーンを入れました。

ーーこのシーンは心地よい余韻を感じる幕引きだと感じました。

コメヒコ:嬉しいです。とりあえずハッピーエンドにはしたいと思いつつ、なにかが大きく変わるのではなく、ちょっとだけでも救われるような終わり方にしたいと考えていました。

ーー塩田さんと佐藤さんを描くなかで意識したことは?

コメヒコ:塩田くんは若手社員の男の子として、平凡で普通な子にしたいと思いました。派手な特徴のないキャラクターの方が親しみを感じやすく、読者も感情移入しやすいと思ったからです。

 佐藤さんは黒くもじゃもじゃとした髪をした、私好みのビジュアルにしました。漫画では表現することがむずかしいですが、低めの良い声で話す人物であると想定しています。

ーー佐藤さんの悩みとなっていた、好きなこととお金を稼ぐことのギャップは、多くの人が共感するものかと思います。

コメヒコ:私自身も社会人になってから漫画家を目指したいと思うようになったものの、自分に自信が持てない期間が長くありました。自分の好きなことに取り組めても、思い描いていたものとは異なり、ショックを受ける……といったことは多くの人が経験することかと思います。

ーー漫画家を目指そうと思ったきっかけは?

コメヒコ:子どもの頃から絵を描くことは好きでした。20歳ごろに友人から「同人誌を描かないか」と誘われて、はじめて本格的に漫画を描きはじめ、それから趣味で二次創作(既存の作品を題材に作品を創作すること)を描いていました。

 仕事をしながらのんびりと漫画を描いていましたが、コロナ禍を機に好きなことをして生涯を終えたいと思い、漫画家を目指しはじめました。

ーー漫画を描くなかで感じる気持ちは?

コメヒコ:1ページを完成させるには多くの工程が必要となるため、完成まで果てしないと感じながら漫画を描いています。ただ同時に漫画は何を描くか自由に考えることができ、こんなに自分の思い通りにつくることができるのかとも感じます。また描くことはこんなに苦しいのに、たまにすごく楽しいと思えるときが訪れるのもすごく不思議で……。

 そして読者の方から感想をいただくときもうれしいですが、漫画を描き終えた際の達成感と言いますか、作品を生み出したことへの喜びを味わえることも漫画を描く魅力だと思います。

ーー今後の目標を教えてください。

コメヒコ:商業媒体での連載を目指して、創作をつづけています。本作は自分の思った以上の反響を呼び、非常に驚きました。普段の生活に潜んでいる、些細だけど大切なことを漫画として描き、読んだ人の心が少しでも軽くなるようなことを伝えていきたいです。

 そして自分自身が楽しく漫画を描けたらいいなと思います。

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