波紋からスタンドへーーリサリサを主人公に据えた小説『ジョジョの奇妙な冒険 無限の王』に見る“黄金の精神”の継承

ジョジョ小説『無限の王』レビュー

波紋使いの魂は消えたのか

 要するに2人は、スタンドという天から授かった未知の力よりも、自らの修行の成果である波紋のエネルギーの方を信じているのだ。

 それは2人のうちの1人の、以下のようなセリフにもよく表れている。「わたしが使う力(引用者註・波紋のこと)は、厳しい修練でみずから獲得したもの。恐怖を克服して、意志の力で鍛えたものだ」

 別のいい方をすれば、スタンドとは、「運命をいったん受容したうえでの可能性」のことであり、波紋とは、「自らの手で未来を切り開くための術(すべ)」であるといえるかもしれない。

 では、時代が変わった第3部以降の“ジョジョ”たちには、そんな波紋使いの魂は受け継がれていないのだろうか。そんなことはないだろう。

 空条承太郎、東方仗助、ジョルノ・ジョバァーナ、空条徐倫、ジョニィ・ジョースター、東方定助、そして、ジョディオ・ジョースター。「黄金の精神」を宿した彼らにもきっと、人間の潜在能力を信じ、自らの技を鍛え続けた波紋使いたちの想いは継承されているはずだ。だからこそ、荒木飛呂彦は、『ジョジョの奇妙な冒険』の最大のテーマを、「人間讃歌」だといっているのではあるまいか。

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