ゴジラ上陸、宇宙人との接触、恐竜復活……現実で起こったらどうなる? ハードSFと最新科学から検証 

もしも○○が本当にいたらーー宇宙人とのコンタクト

  SF作品の中で科学的な正確性を追求した「ハードSF」というジャンルがある。今回はハードSFの名作映画から、宇宙人との接触やゴジラ、ウルトラマンが現実にあった場合を最新科学を交えながら検証ていく。

※必要に応じて参考文献を挙げるが、本稿は『空想科学読本』シリーズとリック・エドワーズ/マイケル・ブルックス(著) 『すごく科学的: SF映画で最新科学がわかる本』を参考にしていることをお断りしておく。

 「もしも空が飛べたなら」は古代から人類の夢だった。その夢は20世紀になって実現するが、実は古代人が熱気球の発明に成功しており、「ナスカの地上絵」は気球から全体像を確認したというロマンのある説が存在する。本当だったらすごいことだ。

  空飛ぶ飛行物体で、存在が確認されていないものと言えばやはりUFOだろう。UFOは"Unidentified Flying Object"の略称であり直訳すると「未確認飛行物体」だ。実際には「物体」ではなく光などの形のないものをUFOと見間違える例も少なくないため、「未確認空中現象」(Unidentified Aerial Phenomena:UAP)という用語も用いられることがある。

  UFOの歴史は非常に古い。西洋や南米のイメージが強いが、古代の日本にもUFOの記録は残っており、日本各地の民俗伝承に登場する虚舟(うつろぶね)はその例である。享和3年(1803年)に常陸国に漂着した虚舟は鉄でできており、窓があり(ガラスが張られている?)丸みを帯びた形をしていたそうだ。記録に残るその形状はまるっきりUFOである。

  宇宙人と結び付けられることが大半のUFOだが、宇宙人との接触はSFでは定番の題材だ。宇宙人は『E.T.』のように可愛らしく友好的だったり、『宇宙戦争』のように交渉の余地すらなかったり様々だが、ハードSFにおける宇宙人とのコンタクトは一味違う。

 『コンタクト』は有名作品とは言い難いが、実にハードSF的な描き方で宇宙人とのコンタクトを描いている。原作者のカール・セーガンは作家であると同時に高名な宇宙物理学者でもあった人物だ。同作には未知とのコンタクトにありがちな派手なSF描写はほとんどない。政治、科学、宗教などの有識者が集まって「異星人からのメッセージと思しきものを受けとったがどうするか?」議論が交わされる場面が重要な要素して描かれている。実際問題として、そんなものを受け取ったらやはり人類はまず議論するだろう。「思考実験」と言うべき実に現実的な描写である。

  仮に異星人とコンタクトするとしたら、どうコミュニケーションをとるかも問題である。スティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』では大きな電光掲示板の光と音で交信を行ったが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』はそこから一歩進んで異星人の言語を創作した。同作でアドバイザーを務めたカナダ・マギル大学言語学部のジェシカ・クーン准教授は劇中の文字について「架空の言語でありながら、一貫性がとてもしっかりしている」と評したが「一貫性」は重要だ。

  人類は数々の言語を生み出してきたが、その中には滅亡した「死語」も少なくない。まだ未解明のものもあるが、有名なヒエログラフをはじめ失われた言語を後世の人類が読解できたのはその言語に「一貫性」が存在するからだ。こういった死語を読解する手法で用いられる一般的なものが「頻度分析」である。頻度分析は暗号の読解にも用いられる手法だが、(その暗号が元々どこの言語で書かれているのか判明していて暗号文が十分な長さである前提を要するが)死語の読解にも応用可能な手法である。

  例えば、英語で最もよく使われるアルファベットはEである。暗号解読者はスクランブルのルールは知らなくても、平文が英語であることがわかっているとする。そうすると暗号文中にもっともよく出てくる文字、または記号はEではないかと推測できるといった具合である。一文字読めればほかの文字を読解する足掛かりにもなる。時代や文化圏によってもよく使われる単語は異なる。古代エジプトやメソポタミアではビールが日用品扱いでよく文書に登場したようなので、おそらくはそういったこともヒントになるのだろう。何にせよ言語であれば一貫性は無ければならないので、それも大前提である。一貫性がなければ文字の使用頻度も言葉の使用頻度もランダムになってしまうので、頻度の分析のしようがない。

  暗号の読解についてはサイモン・シン(著)『暗号解読』にその歴史、手法が詳しく描かれているので興味がある方はぜひ参照していただきたい。同書には古代の言語を読み解く方法についても書かれている。

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