蒙古タンメン中本・白根誠社長 × 白根隆也マネージャー親子対談「中本を大きくした親父の発想は本当に天才的」

蒙古タンメン中本・白根親子対談
『蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100』(飛鳥新社)

 激辛・辛旨ブームの火付け役にして大人気行列店である「蒙古タンメン中本」がファン待望のレシピ本を刊行した。題して『蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100』(飛鳥新社)。そのタイトルの通り、中本が2年以上もの歳月をかけて作り上げた、和・洋・中の絶品レシピ100品が収録されている。

 本書の刊行を記念して、「蒙古タンメン中本」の白根誠社長とそのご子息で本書の監修を務めた白根隆也マネージャーの特別対談が実現した。白根社長は当初は何度も出版のオファーを断っていたそうだが、担当編集者や隆也氏の粘り強い説得の末、刊行が実現するに至ったという。隆也マネージャーは、本書があれば「家庭の辛旨レシピには一生困らない」と断言する。このレシピ本に込めた思いについて聞いた。

【インタビュー最後に、蒙古タンメン中本からの太っ腹なプレゼント企画あり!】

「辛いだけでなく旨いことを絶対に押さえなきゃいけない」

白根誠社長

――「蒙古タンメン中本」ファンからすると、大変嬉しい一冊に仕上がったと思います。本書の企画が始まった経緯を教えてください。

隆也マネージャー:担当編集者さんが情熱を持って粘り強くオファーしてくださったことが始まりですね。5年も前に最初のお話をいただいたのですが、社長が即お断りしていまして。もう一度、2年半前に諦めずオファーをいただいたときも、やっぱり社長の判断で一旦はお断りをしたんです。

誠社長:これまでレシピ本や自伝本などの本のオファーはたくさんあったんですが、基本的に受けてきませんでした。自分をひけらかすのは、偉そうであまり好きじゃないんです。テレビ出演の依頼も、経済番組とか真面目な番組は断ってしまいます。おちゃらけてるのは好きなんだけどさ(笑)。

隆也マネージャー:それでも担当編集者さんは何度も店やイベントに来てくれて、「絶対面白い本になる」と言うんです。僕も調べてみると、確かに激辛だったり辛い料理に特化したレシピ本はこれまでほとんど出てなかったんですよね。ありがたいことにみなさんから「激辛、辛旨といえば中本」という一定の評価もいただいているので、そういう私たちがレシピ本を出したら面白いのかなと。

 最近は世の中で辛い料理の人気が高まっています。10年前はうちで最も辛い北極ラーメンを食べられる人はほとんどいなかったです。でも、今はもうみなさんがペロッと平らげてしまう。そうした激辛、辛旨人気の底上げの一端を担ってきた中本だからこそ、他にはないレシピ本が作れるはずだと思いました。そこで、機嫌の良さそうなタイミングをみては(笑)、何度も社長に相談を続けて。半年かかって「じゃ、やってみれば?」とGОサインを取り付けたんです。

誠社長:バラエティー番組なんかで〝激辛チャレンジ〟とか、お笑い芸人さんがどっちが食べられるか競い合うような企画があるでしょう。お店の宣伝にはなるかもしれないけれど、そういうお話も断るんです。あれは辛いだけで「辛旨」じゃないですからね。私たちもプロなので、作ろうと思えば宇宙一辛いものを作ることはできる。でも私たちだからこそ、辛いだけでなく旨いことを絶対に押さえなきゃいけないんですね。

『蒙古タンメン中本が本気で考えた辛旨レシピ100』より、基本の辛旨ダレの作り方

「自宅で作る辛旨料理には一生困らない」

白根隆也マネージャー

――本書は辛「旨」であることが重要なポイントですね。社長はなぜ今回OKを出したのでしょうか。

誠社長:うちは蒙古タンメンや北極ラーメンといったレギュラーメニュー以外にも期間や店舗の〝限定メニュー〟を豊富に展開しています。これまで世に出た数でいうと数百ではきかないくらいの数を開発してきました。でも提供期間が終わってしまうと食べられません。お客様から「またやってほしい」とリクエストをいただくのですが、やはり店舗ではレギュラーメニューが中心ですし、仕込みの手間なんかを考えると、全部のリクエストにはなかなか応えられません。

 それがレシピ本という形ならば、限定メニュー考案で培った経験値を提供できると思いました。食材や調味料の組み合わせ、旨味、辛味、甘味、苦味、塩味のバランスなどのノウハウをたくさん持っていますから。これをアレンジして使ったら楽しんでもらえるかな、と。あとはコロナ禍の影響も大きかったですね。外食よりも家で食べる〝宅食〟が求められました。自分で作るという楽しみ方がより広がってきた中で、その上でもお手伝いができればと思ったんです。

隆也マネージャー:この本は中本の秘伝のレシピをそのまま公開しているわけではないんです。あくまでも辛さの引き出し方などプロの技のエッセンスをベースにした上で、家庭で美味しく辛旨料理を味わえるレシピ、として紹介しています。

 私たちはラーメン屋である以前にプロの調理者だと思っています。だから中本では和洋折衷、つまりフレンチ、イタリアン、中華、和食など、各国の料理の調理法や技術も積極的に勉強してきました。特にうちの上板橋本店部長の倉井は元々は一流ホテルでシェフをしていて、料理の知識と経験は非常に豊富です。

中華や洋食など、あらゆるジャンルの辛旨レシピが収められている

誠社長:彼は本当に料理自体が好きですよね。彼のように社員みんなが好奇心を持ってチャレンジしているので、どんどんレベルは上がっていると思います。

隆也マネージャー:みんな一丸となって取り組んでいますよね。とはいえ、今回のレシピ本はもちろん家庭向けです。難しい調理工程や手に入りにくい調味料はそもそも使わないようにして、おうちで誰でも簡単に作れることを第一に考えました。そして、辛いだけでなくまずとにかく美味しいこと、さらに作りおきできること。この3点を念頭に置いていました。

誠社長:え!? よく見たらこの本、100品も載っているんだ……! いま知ったよ(笑)

――いまですか!?(笑) そこは隆也マネージャーがこだわったそうですね。中華だけでなく世界各国の多様な料理を楽しめます。

隆也マネージャー:このサイズ、ページ数の一般的なレシピ本は40〜50品のものが多いと思います。でも実は江戸時代からレシピ本は存在していて「〇〇百珍」という名前で、一冊で100品も紹介されていたそうなんです。江戸時代で100品ならば、現代だって最低でも100品だろうと思いました。だから企画開始から発売まで2年3ヶ月もの期間をかけて、最初に140~150品ほど考えた後にそこから「本当に美味しい」「これは旨い」と自信を持っておすすめできる100品を厳選しました。いろいろな国の料理を楽しめるように全体のバランスをとりながら。

ヤムウンセンなど、専門店でしか食べられないようなメニューも盛りだくさん

――「基本の特製ソース」と「絶妙唐辛子バランス(辛さ3:旨さ7)」の掛け合わせで、簡単ながら「超おいしい」料理になるとのことでした。一つ一つのレシピには強いこだわりが感じられます。

隆也マネージャー:中本が刊行する以上、ラーメン同様、本気を出さないといけないと思いました。お客様に「本当に買ってよかった」と思ってもらいたい。1650円の本ですが、10倍の価値があると思ってもらえる本にしないと、ダメだと思うんです。

誠社長:まぁまぁそれくらいで。あんまり言うと自画自賛になっちゃうから(笑)。

隆也マネージャー:本当にそういう気持ちで作ったんですよ。だから一切、妥協はしていません。この1冊さえあれば、どんな辛いもの好きの方でも自宅で作る辛旨料理には一生困らないと思います(笑)。

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