リプトン ミルクティーの生成AI小説「恋AI小説」の狙いは? 小説とPRのさまざまな関係性を考察

小説とプロモーションの関係性

 商品や事業に直接的には触れず、小説を使うことでイメージアップに繋げようという試み自体は古くから行われている。村上春樹がオンワード樫山の広告に「J-プレス短篇集」と銘打って短い小説を発信し、ブランドのイメージ作りに貢献したこともあった。SF作家の小松左京が、石油会社のPR誌「エナジー」に寄せた「海底油田」という小説は、ムウ大陸仮説というSF的な発想の上で繰り広げられるドラマを通して、石油資源への興味を抱かせた。

 SF作家の想像力は常に新しい事業を模索している企業と相性が良いようで、最近はSFプロトタイピングと呼ばれる活動を通し、SF的な発想力を企業が取り入れ次の時代を探ろうとしている。大手ゼネコンの清水建設が自社サイトの「テクノアイ」で日本SF作家クラブとコラボレーションして展開した「建設的な未来」の場合は、SF作家が建設を意識したショートショート執筆し、すぐ先に見えるものとは違ったビジョンを示そうとしたものだった。

「星系出雲の兵站」シリーズで第41回日本SF大賞を受賞した林譲治は、「バベルの明日」というショートショートで、都市機能が巨大なピラミッドの中に集約されたメガシティピラミッドを提案しつつ起こりえる問題点を指摘してみせた。『地図と拳』で第168回直木賞を受賞した小川哲は、「火星人の誕生」というショートショートで、火星の開発の可能性と課題を紹介した。

 清水建設の事業そのものが紹介されている訳ではないが、建設という仕事がどれだけ夢のあるものかは伺える。『機動戦士ガンダム』や『機動警察パトレイバー』を見てロボット作りを志したエンジニアがいるように、SFプロトタイピングから生まれた小説が未来を変えることもあるだろう。

 宣伝だけが企業PR小説の役割ではないし、むしろ宣伝を目的にしないことで、結果的に好印象をもたらす。ネットを使って小説を容易に届けられる時代だけに、そうした動きがこれからも増えていきそうだ。

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