『ブラック・ジャック』実写ドラマでドクター・キリコが女性に? BJとの相容れない対立シーンを振り返る
実写ドラマの放送を控えている医療漫画の金字塔『ブラック・ジャック』。2月29日には主演の高橋一生に続き、待望の追加キャストが発表された。そこで話題を呼んだのは、ドクター・キリコの配役である。今回キリコ役に抜擢されたのは女優の石橋静河。歴代ドラマから見てもキリコを女性が演じるのは初の試みだ。
キリコはブラック・ジャックのアンチテーゼとして登場するキャラクター。それゆえ二人の関係性の描かれ方を心配する声も散見されたが、見どころのひとつとなるのはやはり彼らが互いの信念をぶつける対立シーンなのではないだろうか。
そこで本稿では、ドラマ放送前にドクター・キリコとブラック・ジャックの相容れない対立エピソードを振り返っていく。
「浦島太郎」
キリコは安楽死させる男性患者を見て驚く。患者は55年間意識のない推定70歳の老人だったが、その見た目はまるで少年のように若々しかったのだ。経費がかさみ病院のお荷物となった患者は、最後のチャンスにブラック・ジャックの手術を受けることになっていた。
かくして鉢合わせになった二人は“生けるしかばね”をめぐり相対する。回復しなければキリコに患者を預けることを約束し、ブラック・ジャックはメスをふるうことに。患者は奇跡的に目を覚ますが、途端に老化現象が始まり最後は老衰で死んでしまうのだった。
このエピソードの最後は「おれたちはばかだっ!」と、うな垂れるふたりの医者の嘆きで終わる。ブラック・ジャックは患者を医療で生かすことで救い、キリコは安らかに死なせることで患者を救うが、どちらの信条をもってしても今回の患者を助けることはできなかったのだ。二人の掲げるものは彼にとって本当に善であったのか、この問いは読者に強いインパクトを与えた。
「ふたりの黒い医者」
寝たきりの女性患者のもとへ訪れるキリコ。患者は自分のせいで苦労をする子どもたちを哀れみ、安楽死を望んでいた。一方、子どもたちは母親を助けるためブラック・ジャックに手術を依頼する。
手術は無事成功し、キリコは患者から手を引くことに。「生きものは死ぬ時には自然に死ぬもんだ……それを人間だけが無理に生きさせようとする どっちが正しいかね」と自分の信条をブラック・ジャックに投げ、キリコは立ち去ろうとする。しかしその直後、退院した女性患者が交通事故により親子もろとも即死したとの知らせが入るのだった。
キリコの軍医の過去が明らかになり、安楽死の正しさというブラック・ジャックと対極的な考えが垣間見えた本エピソード。「生きものは死ぬ時には自然に死ぬもんだーー」とキリコが言ったように、いくら彼らが信念を貫き努力しようとも、まるで最初から決まっていたかのごとく物事が勝手に進んでいったのが印象的である。