『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけたアニメ会社「ガイナックス」破産の真相ーー「トマトは黒字」の裏事情

■ガイナックス、農業に参入していた!?

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  ガイナックスといえば、1984年に設立され、『トップをねらえ!』『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』などの歴史的な名作アニメを手掛けたアニメ制作会社である。世界的なアニメ監督である庵野秀明など、数々のクリエイターが所属していたことでも高名であり、古参のアニメファンなら知らない人はいないだろう。

  数々の傑作アニメを制作し、アニメファンの間でブランド化したガイナックスは、アニメ業界を代表する制作会社として君臨していた。ところが、晩年は経営陣の迷走が続いた。クリエイターが離れてしまったこともあって、2010年代には深刻な経営難に陥る。ついに、2024年6月5日から破産手続の開始が決定してしまった。

  そんなガイナックスであるが、2016年に突如、農産物の販売を始めたことがあった。それが“ガイナックストマト”である。ガイナックスとトマト――あまりに異色すぎる組み合わせはアニメファンの度肝を抜いた。「エッ、あのガイナックスが野菜を売るの!?」「確かにガイナックスのロゴは赤いけれど、なぜトマト?」などと、ネット界隈にも衝撃が走った。

  ガイナックスは本気だった。兵庫県神戸市の「北野工房のまち」の一角に「ガイナックスマルシェ」なる販売店を設け、トマトのほか、トマトジュースなど加工品も販売していた。当時の報道によると、糖度8の“ガイナックストマト8”は432円(税込)。店内には『新世紀エヴァンゲリオン』を筆頭に歴代作品のフィギュアが並び、独特の空間だったようである。

■ガイナックストマトは赤字ではなかった!?

  それまでのアニメの実績とはまったく関係のない分野への進出は、ガイナックスの迷走の象徴のように語られることも少なくない。ところが、このガイナックストマト、なんと事業としては“黒字”だったようだ。当時のガイナックスを詳しく知るA氏は、こう話す。

 「残念ながら具体的な数値は出せませんが、ガイナックストマトの事業自体は黒字だったと聞いています。もちろん、ガイナックスの社屋で栽培が行われていたわけではなく提携農園が生産していたのですが、味も良く、評判でした。ただし、この頃のガイナックスは経営の安定化を図るために版権を手放すなど、迷走続きだったことは否めませんね」

  思えば、ガイナックスに限ったことではなく、異業種から農業や農産物の販売に進出する例は意外に珍しくない。だが、天候などにも左右されるうえ、農作物は消費期限が短いこともあって、一朝一夕に取り組むのは難しいといえる。2001年にはあのユニクロが農産物の販売を始めたことがあったが、赤字続きとなり、撤退したほどである。

  そうした例を見ると、黒字を出していたというガイナックストマトは、かなり優秀な事例といえるのではないだろうか。2008年には秋田県羽後町のJAうごが西又葵氏のイラストをプリントした「美少女イラスト入りあきたこまち」を販売し、記録的な売上を出すヒット商品になったこともある。農作物と美少女イラスト、アニメ、サブカルチャーは案外親和性が高いといえるのかもしれない。

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