『デデデデ』映画公開に向けてチェックしたい、心の準備が必要な「浅野いにおワールド」
2024年3月から前章・後章の2章に分けて劇場公開される話題のアニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載された本作は、突如東京上空に襲来した巨大な宇宙船により引き起こされた非日常が、次第に日常に変化していく世界で青春を過ごす少女たちの物語だ。
この作品で「第66回小学館漫画賞」一般向け部門、「第25回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞を受賞した作者の浅野いにお。浅野の他の作品に興味を持った人も多いのではないだろうか。しかし「浅野いにおワールド」は絵柄の可愛さに反して重たい内容が多いため、ヘビー級から読んでショックを受けないように「読む順番」のオススメを紹介しよう。
宮崎あおい主演で映画化もされた『ソラニン』
まずは浅野いにおの代表作で、2010年に宮崎あおい主演で映画化もされた『ソラニン』。主人公の芽衣子はバンドでメジャーデビューを目指していた恋人の種田を突然失い、喪失感に苛まれていた。しかし荷物を引き取りに来た種田の父親から、息子のことを忘れないでやってくれと言われたことをきっかけに、種田が残した「ソラニン」という曲を歌うためにバンドを始める決意をする。
なんの変哲もなく過ぎていく日常と、何者にもなれないもどかしさには共感する人も多いのではないだろうか。永遠にも感じる日々に突如として訪れる別れと深い悲しみも、すべて自分が成長するためのもので人生の一片なのだろうと思わされるまさに青春群像劇だ。浅野作品にまだ触れたことがない人は、この作品から読み始めるのをオススメしたい。
病んでる中学生の恋愛話『うみべの女の子』
次に紹介するのは『うみべの女の子』。成人向けの作品なので注意が必要だが、こちらも2021年にR15+で映画化されている。少年少女の恋愛を描いた内容なのだが、その中身は登場人物たちが鬱々とした病みを抱えており、若さゆえの痛々しい感情の爆発がリアルに表現されている。少々心の準備が必要かもしれない。
突き抜けたギャグとシュールな狂気が混在する『おざなり君』
続いては『おざなり君』。これまで紹介したものと比べて絵柄のシンプルさに同じ作者なのか戸惑う人もいると思うが、こちらも浅野いにおの世界を味わえる作品だ。シュールなギャグとロックンロールにシリアスさも加わっている。
不条理な展開やストーリーの端々に感じる狂気のようなものにはじめは抵抗感があるかもしれないが、読み進めていくと引き込まれていく不思議な魅力がある作品だ。オールカラーで色による表現の変化も楽しめるだろう。