【漫画】夫が亡くなった後、残された妻は……長嶋有の小説を漫画化『いろんな私が本当の私』が凄い
長嶋の解説ページには、なぜその作家に漫画化を依頼したのか、またどのような雰囲気でネームのやり取りがされていたのか、そして完成した漫画を読んでどう感じたのかを語る解説ページが掲載されている。
さらに、巻末には各作家からのメッセージも。長嶋と作家がどのようにリスペクトし合っているのか垣間見えると、その作家の他の漫画も気になって仕方ない。そして“この作風だから、この原作小説がこう漫画化されたのか“と咀嚼したくなるのだ。
ちなみに、この長嶋作品の漫画化は今回が第二弾である。前作のタイトルはずばり『長嶋有漫画化計画』(2012年/光文社)。そちらの解説欄には、長嶋自身が企画書を書き、少しずつ作家たちを口説きながら完成させたものだと語られている。
そのきっかけとなったのが、藤子不二雄A作品についての長い評論を書き下ろした同人誌を本人に送ったところ、「飲もうじゃないか」となったというのだから、なんともエネルギッシュだ。
『長嶋有漫画化計画』には萩尾望都や吉田戦車を筆頭に、15名の人気作家によるコミカライズ作品が並んだのだが、売れ行きは想像よりも“そこそこ“だったそう。「いつかリベンジを」と思っていたと、11年越しに書き下ろされた“電子版あとがきと補遺“にあった。
それから約10年の時を経て、願いを叶える形で今回『いろんな私が本当の私』の企画が決まったそう。自ら体当たりで作り上げた第一弾と、今度は旬の作家陣を迎えての第二弾。その読み比べもまた長嶋作品を多面的に味わうことができて楽しい。小説と漫画、そして小説家と漫画家と。それぞれの才能と仕事ぶりに惚れ惚れする、そんなこの本ならではの体験が実に面白いのだ。