実写『幽☆遊☆白書』続編は「魔界の扉編」に期待したい理由 『呪術廻戦』に影響を与えた能力バトルの傑作

『幽☆遊☆白書』「霊界死闘編」の面白さ 

芥見下々にも影響を与えた仙水忍のエピソード

  そのほか、TVゲームを現実のものとする「遊熟者」(ゲームマスター)天沼月人との戦いは、『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部に登場したテレンス・T・ダービーを髣髴とさせるところがある。同作といえば能力バトルを描いたマンガの金字塔であり、冨樫が大きな影響を受けたことでも有名だ。

  なぜ冨樫がこうした能力バトルに舵を切ったかといえば、「暗黒武術会編」のような路線では、パワーインフレによって限界を迎えることが分かっていたためかもしれない。この路線変更は、後に連載される『HUNTER×HUNTER』にも受け継がれた上、さらに高度な進化を見せていくことになる。いわば「魔界の扉編」は、『HUNTER×HUNTER』の前身にあたる物語と言えるだろう。

  また同エピソードでは、敵の首魁である仙水忍のキャラクター性も大きな魅力となっている。仙水は元々正義感が強く、人間を守るために妖怪と戦っていた。ところが霊界探偵の任務で訪れた別荘にて、人間が弱い妖怪をなぶりものにする「悪の宴」を目撃してしまう。この世のものとは思えない光景を見た仙水は、居合わせた人間を全滅させ、「ここに人間はいなかった」「一人もな」と言い放つ。そして価値観が一変し、人間の醜さに絶望するようになったという。

  真面目すぎるがゆえに人間に絶望した仙水の姿は、不良でありながら人間を信じる幽助との対比ともなっており、「魔界の扉編」の物語に深みを与えている印象だ。また“闇落ち”エピソード自体の面白さも多くのファンが認めるところで、『呪術廻戦』で描かれた夏油傑の過去編の元ネタとも言われている。

  なお、実写ドラマ『幽☆遊☆白書』の続編については一切情報が出ていないものの、最終話では戸愚呂兄が波打ち際に打ち上げられるシーンもあった。ここから察するに、やはりスタッフは「魔界の扉編」の実写化を視野に入れているのではないだろうか。圧倒的なクオリティで能力バトルが再現される日を期待して待ちたい。

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