【漫画】打ったものを「レコード」に変える不思議なピストル……よく考えると怖くなるウェブ漫画
――本作への反響はいかがですか。
猪原秀陽（以下、猪原）：以前は絵本のような絵柄でしたが、今ちょうど写実に寄せている過渡期なんですよ。「たくさんの人に読んでもらいたい」という意図からのチャレンジだったので、試してすぐのバズは嬉しかったです。ここまで反応に現れるのかと。
――撃ったものがレコードになるピストルの着想は？
猪原：大橋裕之さんの漫画『音楽』における音の表現に面白さを感じて、自分でも作ろうとしたのが最初でした。
――文化系の叔父さんにレコードを持っていく、という流れはサブカルっぽいと感じました。しかも彼が会社でいじめにあっていると。
猪原：僕は会社員として働いたことはありませんが、どこの環境でも苦手な人はいますよね。最近は善と悪、ネガティブとポジティブなどの人間の二面性に興味があって、僕自身も内面にある嫌な部分を認められるようになってきたと感じます。それをストーリーに盛り込めたらと考えていました。
――ピストルも美を生み出すことに使えるし、暴力にも使えるという点で二面性を感じました。それはSNSやテクノロジーの使い方にもいえるのかなと。
猪原：それは意図していませんでしたが、確かにSNSを見ていて感じることと同じですね。
――宇宙人の登場については？
猪原：不思議なピストルが出てきて、最終的に話として成立させるためには宇宙人しかないかなと（笑）。割とオカルト系の話は好きで、エイリアンには色々なタイプがいるのですが、界隈では「グレイタイプは感情がない」と言われているのでオリジナルな姿のものを登場させました。さらに音楽好きなことを表すためにショートドレッドにしています。
――ご自身だったら何をレコードにしてみたいですか。
猪原：倫理的な問題はありますが、元に戻せるという前提で人間には興味がありますね。
――猪原さんは東京・渋谷の古着屋「mericca」のオーナーさんが手掛けている漫画雑誌「COMIC IN THE HOLE」にも関わっているということですが。
猪原：その古着屋さんがマンガ好きなんですよ。知り合うきっかけは、彼がネットで「自前のレーベルであなたの漫画を出したい」と声をかけてくれたことでした。それで数冊出させてもらってから、僕も「雑誌を作りたい」と提案して、インディー雑誌「COMIC IN THE HOLE」の編集を担当しています。
――今後の展望などがあればお願いします。
猪原：商業誌で描こうというモチベーションがあります。あとは自分的にストーリーを作るのが得意だと感じているので、人間の内面や社会をSFと絡めるような凝った物語作品を作ろうかなと。とはいえ、それを多くの人に読まれるようなタッチで描けたらいいですね。
