『お隣の天使様』が5冠制覇! 『このライトノベルがすごい!2024』群雄割拠の文庫部門ベスト10を解説

『このライトノベルがすごい!2024』解説

 単行本・ノベルズ部門で第1位の『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。-妹と結婚した片思いの相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら-』は、『このラノ!2023』での第6位から躍進。過酷な状況で戦い続ける女性が主人公という内容から、女性の得票でトップを集めて、第4位の理不尽な孫の手『無職転生~異世界位ったら本気だす~』(MFブックス)や第6位の伏瀬『転生したらスライムだった件』(GCノベルズ)といったベストセラー作品を上回った。

 第2位の十夜『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』(アース・スターノベル)や第3位の十夜『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました』(SQEXノベル)、第5位の雨川透子『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』(オーバーラップのベルスf)など単行本・ノベルズ部門は女性の得票を多く集めた作品が並んだ格好。男性の得票が分散する一方で、女性向けでは人気が集中して得票数で上に上がってきたのかもしれない。

 『お隣の天使様』の真昼が第1位のキャラクター女性部門で、2位は『ロシデレ』のアーリャ、第3位は『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。』のウィステリア・イレーネで、作品への支持がキャラ人気にも反映された格好。キャラクター男性部門は第1位の藤宮周に続いて第2位に『ロシデレ』の久世政近、第3位に作品は殿堂入りとなったものの、個別ではノミネート可能な『よう実』の綾小路清隆が並んだ。

 イラストレーターは第1位のはねことに続き、第2位に『ロシデレ』などを担当しているももこ、第3位に『よう実』を手がけるトモセシュンサクが並んで、こちらも作品人気がそのままイラストレーター人気にも出ていると言えそうだ。

 実写映画とTVアニメが作られ、楽天ブックスのライトノベル週間ランキングでも何週間も1位を獲得し続けていた顎木あくみ『わたしの幸せな結婚』(富士見L文庫)が、『このラノ!』のランキングに顔を出していないのは、刊行元の富士見L文庫が集英社オレンジ文庫、『鬼の花嫁』が人気のスターツ出版文庫などと共に、ライト文芸、キャラクター小説といったカテゴリーに入っていて、ノミネートの対象になりづらいからだ。

 加えて、殿堂入り作品が除外されること、大森藤ノ『ダンジョンに出会いを求めたら間違っているだろうか』のような長大シリーズ、がすでに有名だからと推されづらいこともあるため、『このラノ!』のランキングが、現実のラノベ市場をそのまま表しているとは言いづらい。ただ、ランキングに並ぶには、一般読者とラノベに詳しい協力者の得票を集める必要がある。例年にない群雄割拠となった『このライトノベルがすごい!2024』に登場した作品から、次の殿堂入り作品を探す楽しみを感じよう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「小説」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる