TOLAND VLOG・サムはなぜ『古事記』にハマったのか? 現代的な視点から見た奥深い魅力

サム『古事記転生』インタビュー

物語の主人公・サムは自分自身の投影?

――本作の主人公はサムです。サムさんご自身が主人公のモデルなのでしょうか。

サム:そうですね。自分自身を投影して物語を綴ったので、主人公の名前はサムがいいなと選びました。それでも、はじめは自分の名前をつけるのには抵抗があったんですよ。でも尾澤さんと話す中で、主人公はサム以外にない、サムと言い切りましょうと決めました。ちなみに、登場するすべてのキャラクターが自分の周りの人をモデルにしています。サムは僕と、僕の兄貴の性格を組み合わせた感じです。

――そして、異世界転生ものの漫画や小説はブームですよね。他の作品との違いを出すために工夫した点などはありますか。

サム:異世界転生ものは、漫画好きなので結構読んでいたのですが、さすがに数が多いのでおなかいっぱいだと思っていたんです。でも、『古事記』を説明するためには転生という手段しかないと考え、異世界転生ものにすることを決めました。『古事記』は歴史書なので、異世界というよりはタイムスリップものでもあるのですが。日本は歴史書をさかのぼっていくと神様の時代に繋がっていくとされている稀有な国で、神様を実在した存在として解釈することができるのです。

――『古事記』は完全なフィクションではない、ということですね。

サム:仮に『古事記』が完全に創作だとしましょう。それなら、大国主の国譲りのシーンなんて、大国主が懸命に作り上げた日本を、天照大御神が横取りしてしまうようにも捉えられるわけですから、カットしてしまえばいいわけですよね。それでも書かざるを得なかったのは、『古事記』を編集した人たちが、当時の経緯を知っていたことに他なりません。僕は、あくまでもリアルな史実がベースにあり、それに誇張を加えたのが日本神話だと解釈しています。

大国主の人間らしさと豊かな魅力

――サムさんがプッシュしておられる日本神話の神様「大国主」の魅力は、どんな点でしょうか。

サム:『古事記』で活躍する大国主という神様は今風の主人公なんですよ。ゲームで言えばレベル1から始まります。いじめを経験しながら苦難を乗り越え、人の力も借りて立派になる成長物語が、これでもかと書かれています。そして、国を背負うまでの過程を実に丁寧に描写しているので、物語の紡ぎ手からしても魅力ある神様だったんだろうなと思いました。対して、素戔嗚尊(すさのおのみこと)は最初から荒ぶる神様。泣きわめけば海は干からび、雷も鳴る、まさにステータスマックス状態の神様ですね。

――本来の大国主の性格そのものが、異世界転生やファンタジーものの主人公のようで面白いですね。

サム:成長してからの話も面白いんですよ。国造りの際、少彦名神と日本中をまわり、農業、漁業、医療などを教えています。そんな神様は一人もいませんから、実は凄い神様なんですよ。努力家で、本気で国のことを思っていたんだと思います。そして、道中のエピソードも人間らしくて面白い。大国主の相棒の少彦名神が病気になり、道後温泉で温まるとテンションが上がって裸のまま踊りだすシーンや、播磨を歩いている少彦名神が大国主とウンコの我慢大会をするシーンはギャグ満載で面白いですよね。こんな話が必要なのか? と現代人でも疑問を抱いてしまうようなギャグ、そして人間味があるエピソードが書かれています。

――サムさんのお話を伺っていると、『古事記転生』の物語は異世界転生ものという体裁をとるものの、実は『古事記』の内容を忠実に書いていることがわかります。

サム:おっしゃる通り、かなり忠実に書いています。先ほどの少彦名神の話もそうですし、建御雷神が夢に干渉して剣を授けるシーンとか、現代のファンタジー小説でもありそうな逸話と個性的なキャラばかり。アレンジを加えなくても通用するくらい、現代的な感性で見ても魅力があふれているのです。

――あと『古事記転生』には、日本神話のトリビア的なネタが随所に挟まっていますよね。これもサムさんらしい工夫だなと思いました。

サム:僕のYouTubeチャンネルは歴史書を扱う、めちゃくちゃマニアックな内容です。『古事記転生』もその流れを受け継いで、チャンネルでよく扱う、考察要素を潜ませて作っています。あと、尾澤さんの判断で、印象的な用語は太字で表記しています。

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