ジャンプ新連載『カグラバチ』ネットミームで異例の国際的ヒット? 欧米圏の読者から大反響

『カグラバチ』なぜ海外で話題に?

 9月18日から週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載が開始された漫画『カグラバチ』の様子が何やらおかしい。いや、おかしいのは作品そのものではなく、それを取り囲むネットの反応なのだ。なぜか今、主に欧米圏のジャンプ読者たちによって本作が異例の大盛り上がりを見せている。

手塚賞受賞作家による新連載として

WJ新連載『カグラバチ』公式PV

 漫画『カグラバチ』は3号連続で新連載が開始される「JUMP NEXTWAVE新連載3連弾」の2作目となる。作者はそれぞれが手塚賞出身の新世代であり、本作を手がける外薗健も読み切り作品『炎天』で第100回手塚賞の準入選を獲得。武術を極めた証である霊獣を宿すために競い合うライバルの少年エンとトウマ。ある日エンが先に霊獣を宿すがそれを敵に狙われてしまい、トウマに選択が迫られるという内容の作品で「漫画を描く楽しさが伝わった」「キャラクターの心の動きなどは自然で、素直な印象でとても読み易かった」「アクションも分かり易い」という評価を得ている。

 他にも地獄の悪魔と青年の物語を追う『ロクの冥約』や、現代社会に生きる忍びが殺人鬼を追い詰める『CHAIN』、排他的な学生生活を描いた『まどぎわで編む』、GIGA2021 Spring掲載の『さらば!チェリーボーイ!』など、これまでもいくつかの読み切り作品を手掛けてきた外薗。しかし、長編連載は『カグラバチ』が初めてだ。新人漫画によるデビュー作品、そして何より“まだ第1話しか掲載されていない”のにも関わらず、本作は19日時点で日本、中国、韓国を除く、世界中で提供されている集英社アプリ「Manga Plus」内のランキングで10位に上り詰め、人気作『ブラック・クローバー』と『SPY×FAMILY』を抑えた。そして24日時点では、『僕のヒーローアカデミア』を抑え、なんと5位にまで到達している! 一体なぜ、海外でこのようなヒットになっているのか。その大きな原因はインターネットミームだった。

悪ふざけから真剣なものまで 過激派『カグラバチ』ファン続出

 ミーム(meme)とは簡単に説明すると、面白画像や動画そのもの、そしてそれらがインターネット上で拡散されていく文化を意味している。『カグラバチ』は、このミーム画像がとにかく多いのだ。始まりは、誰かが本気なのかふざけてなのかわからない雰囲気で『カグラバチ』の主人公チヒロの画像を使い、「ジャンプ史上最高の漫画」と投稿した。するとどんどん人々がその“コンセプト”に乗り出して、『ONE PIECE』のルフィをはじめとするジャンプ人気作の主人公とチヒロのコラ画像を作って「カグラバチ最高!」と謳った。

 もともと日本刀を使ったり、妖術が登場したりと昨今のジャンプの人気作品の特性を掴んでいる作品なので海外ファンから注目されるのも自然に感じるのだが、このミームに拍車がかかったと感じるのは誰かが“すでに”アニメ化前提で作ったファンメイドのOST(オフィシャルサウンドトラック)を投稿したタイミングだ。

 これを機に、自作アニメを作る者、自分でチヒロ役の吹き替えをした動画を挙げる者、「ゲームが作られた!」とPS4のソフトに『カグラバチ』の写真を入れる者などが続出。吹き替え動画を作ったファンが「声優に抜擢されて嬉しいです!」という具合に発言しているように、これらは“あたかも現実で起きた既成事実”として投稿されている。そういうジョークに人々が過剰に反応したのが『カグラバチ』ミーム現象なのだ。

 基本的には“クソコラ”の塊だったり、事実無根の情報ばかり飛び交っていたりするわけだが少なくても先述のように人々の熱気は“実際に”『カグラバチ』の人気を押し上げる形になっていた。余談になるが、国内でも話題のマクドナルドの新作コマーシャル映像が海外でバズっているのも、そこで描かれている父親が“チヒロに似ているから”という理由で「さすが、第1話しか出ていないのにもう世界的チェーンのCMに出演している!」と、『カグラバチ』過激ミーム派が盛り上げたことが大きなきっかけになっている。

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