【漫画】“初恋の痛み”が命にかかわる世界だったら……プロ漫画家の読切作品『初恋痛』が悲しすぎる

「先輩の妖しい雰囲気を描きたい」

――『初恋痛』を制作した当時の状況など教えてください。

栗崎:『初恋痛』は出版社への持ち込み用として描いた作品です。当時、午前中は自分の原稿を執筆、午後はアシスタント業をするというスケジュールでした。結果的には、『月刊マガジン』の編集さんの目に止まり、佳作をいただけました。

――死人が出るほどの初恋の痛みが起きてしまう、という尖った設定でしたね。

栗崎:「人を愛することで生まれる胸の痛みが本当に耐えられないほどの痛みだったら愛の形も変わるのだろうか?」と考えました。とりわけ、初恋はずっと胸に刺さり続けるものなので、初恋に焦点しぼって制作しました。

――その設定を百合漫画として描こうと思った理由は?

栗崎:男女の恋愛や百合やBL、片想いや両想い、純愛や悲恋など、様々なシチュエーションで考えて、それぞれでプロットにしました。その中でも特に先輩の妖しい雰囲気が描きたかったので、この2人をメインにしました。

――先輩はどのようなイメージで形にしていったのですか?

栗崎:「何を考えているのかわからない」というところを軸に先輩を制作しました。また、その対比になるキャラとして、後輩の女の子を描きたくて花を完成させました。表情がコロコロ変わる女の子が好きなので、花というキャラを考えるのは楽しかったです。

バッドエンドは最初から決めていた?

――花もそうですが、作中では2人の様々な表情が描かれていました。表情を描く際にはどのようなことを意識していますか?

栗崎:最後のコマを“もう見ることのない一番幸せそうなふたりの笑顔”にしたくて、他のコマでの「痛い」「辛い」「悲しい」、さらには歪んだ表情などは思い切り表現するよう意識しました。先輩の歪んだ表情は、“綺麗だけど怖い”というイメージが伝わるよう本当に何度も描き直しました。

――あまりにも悲しい結末でしたが、ラストは最初か決めていたのですか?

栗崎:バッドエンドは最初から決めていました。「先輩には一生、痛みと後悔を抱えて生きてほしい」と思ってこの結末にしました。

――ちなみに本作は4年ほど前に描いた作品とのことですが、今読み返してどういったことを感じますか?

栗崎:画力に関しては荒くて恥ずかしい部分もありますが、当時の自分にしか描けない感性や内容でもあるので、個人的には良い評価をあげたいです。特に「痛い」と書いて「すき」と読む部分は今でも気に入っています。また、バッドエンド以外の選択肢もいろいろ考えてみたかった気もしています。

――最後の今後の目標など教えてください。

栗崎:最近『こだぬきと領主様の物語』(スクエア・エニックス)という連載漫画を終え、単行本の制作を行っています。三巻完結で、今年中に二巻、来年に三巻が出る予定です。また、来年には他の連載も始まる予定なので、良ければ見ていただけると嬉しいです。また、『コミティア』などにも積極的に参加したいと思っています。

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