坂本龍一にとって「本」はどのような存在だったのか? 書籍『坂本図書』を読む

『坂本図書』

 個人的にもっとも心に残ったのは、橋元淳一郎(『時間はどこで生まれるのか』)の章だった。相対性理論、量子論などによる物理学的時間、そして、我々が日常のなかで体感している人間的時間を融合しながら、時間の本質に迫ろうとするこの本は、坂本自身も大いに刺激を受けている。「僕はといえば、ますます時間は存在せず、人間の脳が作った虚構だという気持ちが強くなっているのだが。」(102P)という一文も印象的。坂本が好きだったという「芸術は長く、人生は短し」という一節とのつながりを感じたのは、私だけではないだろう。

 本に関するインタビュー(坂本龍一、本の可能性を語る。「本はパフォーマンスかもしれない」)で坂本は、こう語っている。

「アクセスしやすくて、どこからでも読めて、どこに飛ぶこともできるといった本の面白さを、デジタルメディアが出てきたことによって、より明確に捉えることができるようになったんですね。だから本というものを『メディアパフォーマンス』の対象として扱うことができると思ったし、今でもそう思っています」

 『坂本図書』で取り上げられた書籍もまた、読み手を様々な時代や場所に連れていき、さらに深い知識と生きるための知恵を得るきっかけになるだろう。それはおそらく、坂本自身も追い求めていた、真の精神の自由への入り口になるはずだ。

 また、坂本の蔵書を実際に手に取り、読むことができる空間・坂本図書が9月末に東京都内にオープン。坂本図書は完全予約制となり、場所は非公開で運営される「いつか古書店の店主になるのが夢だった」という坂本の願いが実現した空間だと言えるだろう。(予約方法などの詳細は、オフィシャルサイトや各SNSで確認を)

■関連情報
『坂本図書』
ウェブサイト: https://sakamoto-library.com
Instagram:https://www.instagram.com/sakamoto_library/
twitter: https://twitter.com/sakamotolibrary

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