実写『ONE PIECE』はなぜ絶賛されている?「新世代」をテーマに再構成された序盤のストーリー

実写『ONE PIECE』はなぜ絶賛?

※本稿は実写版『ONE PIECE』のネタバレを含みます。

  8月31日に公開が始まるやいなや、世界中で大きな反響が巻き起こっているNetflixの実写版『ONE PIECE』。漫画を原作とした実写化企画としては、大成功と言っていいだろう。同作がこれほど多くの人に受け入れられている理由は、原作の序盤にあたる展開が巧妙に再構成されている点にありそうだ。

  現在配信されている実写版『ONE PIECE』のシーズン1は、全8話構成。原作の「東の海(イーストブルー)編」をもとに、ルフィの旅立ちからアーロン一味との戦いまでが描かれた。しかしその旅路は必ずしも原作と一致しているわけではなく、さまざまな点でアレンジが加えられている。

  もっとも目を引く改変は、物語序盤における海軍の動向が原作よりもつぶさに描かれていることだ。とくに、ガープ中将と新入り海兵・コビーの出番が格段に増加している。

  たとえば実写版の第1話では、ルフィがコビーと出会い、シェルズタウンで別れるまでの展開が丸ごと描かれることに。そしてその後、コビーはヘルメッポと共にガープの船に乗り込み、メインストーリーと並行してルフィたちの動向を追っていく。すなわち「偉大なる航路」(グランドライン)を目指す麦わらの一味と、それを追う海軍サイドの動きが、対になるように構成されている形だ。

  こうした改変によって、何が変わったのか。1つ目は、『ONE PIECE』の世界観が中立的に描き出されている点が挙げられるだろう。原作では海賊の視点だけで世界観が明かされていったが、実写版では治安を維持する海軍の視点から海賊の有り様が示されている。

  かといって海軍が正義、海賊が悪という図式でもなく、コビーの目を通して海軍の汚点や“いい海賊”の存在が描かれていることにも注意が必要だ。その描写があるからこそ、一般的には悪とされる海賊に憧れるルフィに視聴者が共感しやすくなっているのではないだろうか。

  もう1つ、ガープが物語の主軸になったことによる影響も大きい。第1話ではガープが22年前、海賊王ゴール・D・ロジャーの処刑に立ち会ったことが描かれていた。そしてメインストーリーでは、ベテランの海兵として新兵のコビーを育て上げていく一方、孫であるルフィとの対決を繰り広げる。

  こうした展開から浮かび上がってくるのは、ガープという旧世代の英雄が、新世代の若者たちに時代の主役を譲るというテーマ性だ。海上レストラン「バラティエ」に訪れた際、同じく旧世代を生きた赫足のゼフとふたりで語り合うシーンは、そんなガープの役割を象徴しているように見える。

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