『チェンソーマン』第2部のラスボスは「死の悪魔」? 混迷を極める最新15巻を読み解く
8月4日、『チェンソーマン』(集英社)の第15巻が刊行された。藤本タツキがジャンプ+で連載している本作は、悪魔が跋扈する日本を舞台に、チェンソーの悪魔と契約してチェンソーマンとなった少年・デンジが悪魔と戦うバトル漫画だ。
2018年から2020年にかけて週刊少年ジャンプで第1部「公安編」(1〜11巻)が連載された『チェンソーマン』は「ジャンプ+」に掲載媒体を移し、2022年から第2部をスタート。当初はデンジが登場せず、戦争の悪魔・ヨルと契約してチェンソーマンを殺そうとする女子高生・三鷹アサの物語が展開されていたが、アサとデンジが出会い、二人の関係が深まるにつれて物語の焦点が再びデンジに当たるようになってきている。
そしてこの第15巻では、アサを助けるために画面狭しと激しいバトルを繰り広げるデンジ=チェンソーマンの血まみれの戦いが堪能できる一冊となっていた。
※以下、ネタバレあり。
第15巻では、落下の悪魔とデンジの対決が描かれた。殺した女の頭部を抱えてシェフの姿で徘徊する落下の悪魔は、三鷹アサを食材とした料理を作るために、次々と人間を殺していく。
第2部は第1部のセルフリメイク的側面が強く、コウモリの悪魔や永遠の悪魔といった、第1部に登場した悪魔が姿を変えて再登場して戦う場面が描かれていた。今回の落下の悪魔との戦いは、第8巻で地獄に突き落とされたデンジたち公安のデビルハンターが、闇の悪魔と対峙する場面を語り直しているという印象だ。
超現実的な場面が続き、圧倒的な暴力によってデンジたちデビルハンターが容赦なく殺されていく地獄の描写は『チェンソーマン』の漫画としての評価を決定的なものに変えたが、今回の落下の悪魔との戦いの暴力描写も凄まじく、前巻の団地で無数の人々が転落死していく不気味な場面から始まり、悪魔との戦いで崩壊していく街並みが圧倒的な画力で展開される。
何より驚かされるのは迫力を生み出すコマ割りだ。藤本タツキは、コマ割りと見開きという漫画ならではの絵画表現に強いこだわりを持つ漫画家だが、落下の悪魔の攻撃によって“上に落下”していくアサの手をデンジが空中で掴む場面は縦長のコマの連続によって「浮遊感」が表現され、アサの武器化能力で生み出した前輪にチェンソーが搭載されたチェンソーマンバイクで逃走する場面では、横長のコマを多用することでバイクの「疾走感」を表現している。
止まっている絵の連なりによって動きを表現するコマ運びは、手塚治虫の時代から追求されてきた漫画表現の核となる快楽だ。この「コマ運び」を更新することで、今までにない漫画表現を目指そうとする先鋭性が『チェンソーマン』にはあるのだが、この15巻を読んでいると、バトル漫画におけるアクションの描き方には、まだまだ無限の可能性があるのだと実感させられる。