ジブリ『コクリコ坂から』国宝級イケメン・風間俊 原作では超問題児だったのは本当?

コクリコ坂から(徳間アニメ絵本32)
『コクリコ坂から(徳間アニメ絵本32)』(徳間書店)

 スタジオジブリの作品といえば、原作からストーリー展開や設定が大きく変更されることがよくある。企画・脚本を宮崎駿、監督を宮崎吾朗が務めた『コクリコ坂から』も、驚くほどに原作とのギャップが大きい作品だった。

 ジブリ版『コクリコ坂から』は、1963年の横浜で繰り広げられる少年少女の青春物語。下宿屋「コクリコ荘」を切り盛りする女子高生の松崎海(メル)と、高校の部室棟「カルチェラタン」を取り壊しから守ろうとする少年・風間俊が、話の中心人物となる。

 そんな同作の下敷きとなったのは、1980年に「なかよし」に掲載された同名の少女漫画だ。原作・佐山哲郎、作画・高橋千鶴の2人が生み出したストーリーは、約30年後に作り上げられる作品とは大きく異なっていた。

 何より違うのが、主人公たちのキャラクター造形だ。ジブリ版『コクリコ坂から』のメルは、芯が強いしっかり者でありながらも、おしとやかな印象が強いキャラクター。だが原作では、とにかく気が強く、男勝りな性格として描かれていた。

 俊が目の前で校舎から飛び降りた際、特ダネと喜んでいた新聞部員を見つけると、ビンタを食らわせながら「人でなし!」と一喝。さらに椅子を振りかぶって追撃しようとしていた。また、俊と初めて会話するシーンでも、からかい交じりの言葉を受けて、すかさず平手打ちを放とうとしたほどだ。

 そもそも俊が彼女に興味を持ち始めたのも、売店で割り込んできた大男に「大きな図体して脳みそはどこについてんの」と説教する姿を見たのがきっかけだった。

 原作の姿と比べると、映画のメルはほとんど別人なのだが、その理由については大女優・吉永小百合の影響があるとも言われている。宮崎吾朗監督は『コクリコ坂から』を制作するにあたって、1960年代前半の日活青春映画を参考にしたが、それらの作品で主演を務めていたのが若かりし頃の吉永だった。瑞々しさを感じさせる人物像は、たしかに共通する部分と言えるだろう。

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