医学部を9浪した娘はなぜ母を刺殺したのか? 大注目のノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』

『母という呪縛 娘という牢獄』レビュー

 本書は昨年の刊行直後から話題となっていたが、数ヶ月を経たいまもメディアで取り上げられることもあり、Amazon書籍ランキングでは上位にランクインしている。まずはその衝撃的な内容が耳目を集めた一因ではあろうが、著者が2年間もの期間、取材を重ね徹底的に調べ上げて、母娘の関係性を丹念にまとめているからこそ反響が広がっているのだろう。 

 特に奇妙な心地で印象に残るのは、看護学生時代の数年間は、母娘の仲が良い点だった。休日には近所のスーパーやショッピングモールにともに訪れ、東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンなどのテーマパークにまで一緒に遊びに行っているのだ。その束の間のあたたかな関係性は、母娘の共依存関係、そしてそれがあるからこそ逃げることができないことを表している。 

 もちろんそんな関係性が描かれるのは本書のごく一部に過ぎない。『母という呪縛 娘という牢獄』というタイトルの通り、その呪縛と牢獄の不自由さに縛りつけられるような読み心地が続く。しかし、絶望ばかりでもない。著者は巻末の謝辞で「髙崎妙子氏のご冥福を心よりお祈りするとともに、あかり氏が新しい人生を切り開かれることを祈念しています」と締め括っている。あかりは刑期を終えたら、いずれ自分も罪を犯した人間の立ち直りを支援したいのだという。

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