『HUNTER×HUNTER』幻の“0巻”の内容とは? 収録作「クラピカ追憶編」のデジタル書籍化は連載再開への布石か
「週刊少年ジャンプ」での週刊連載を終え、現在は新たな掲載ペースを模索中の人気作『HUNTER×HUNTER』。単行本は2023年7月現在「37巻」まで刊行されているが、「0巻」が存在していることがファンの間では知られている。
オークションサイト等でプレミアム価格で取引されてきた『HUNTER×HUNTER』0巻は、どんな内容なのか。2013年に公開された映画『劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影(ファントムルージュ)』の入場者先着100万名に配布されたもので、メインとして収録されているのは映画の約10年前に描かれた未公開ネームであり、主要キャラクター・クラピカの少年期を描いたオリジナル読切「クラピカ追憶編」。2012年12月3日&10日発売の2号にわたって「週刊少年ジャンプ」にも掲載された、全63ページというボリュームの力作だ。
映画『緋色の幻影』の内容は、次のとおり。少数民族であるクルタ族のクラピカは、幼少期に一族を皆殺しにされていた。犯人は凄腕の盗賊集団・幻影旅団。クラピカは旅団に奪われた仲間の眼ーー感情が昂ると美しく色づく“緋の眼”を取り戻すため復讐の旅を続けている。そのなかで、取り戻した緋の眼を何者かに奪われてーー。
そして「クラピカ追憶編」は、クルタ族を見舞った惨劇の前日譚だ。さらに0巻には作者・冨樫義博氏の一問一答(なんと回答は手書きだ)が収録されており、ひとつ有名なやり取りがある。「今後、クラピカは、幻影旅団はどうなるのでしょうか?」という問いに対し、冨樫氏は「全員死にます。」と回答。これまでも読者を手玉に取ってきた鬼才・冨樫氏のこと、「(不老不死という設定ではないのでいつかは)全員死にます。」という可能性もあるが、準主役級のクラピカと、作中でも高い人気を誇る幻影旅団が「全員死ぬ」というショッキングな“公式情報”は瞬く間に拡散され、ファンの考察を呼んでいた。
さて、「クラピカ追憶編」はあくまで読切作品であり、クラピカというキャラクターを掘り下げるもので、本編に影響を与えるものではないはずだった。しかし2022年、約3年11か月ぶりに再開された連載において「幻影旅団の過去」が描かれ、これに密接にかかわるエピソードだとして大きな話題に。本編の重要なピースとして関心が高まる中でも、見逃していた人がこれを読むためには、週刊少年ジャンプのバックナンバーか、0巻を入手する必要があった。
しかし7月4日、ついにこの「クラピカ追憶編」がデジタル書籍として発売(上記の一問一答は収録されていない)。このタイミングの刊行は、連載再開を待つファンへのご褒美か、あるいは再開が近いことを意味しているのか、と考えてしまうが、いずれにしてもファンなら一読の価値がある。現在進行形のストーリーに絡む謎が提示されており、かつ最後の1ページは、『HUNTER×HUNTER』という作品が持つダークな側面を集約したような衝撃だ。価格も税込220円と手頃なので、ぜひチェックしよう。