音楽雑誌『Player』休刊に寄せて 55年にわたって愛され続けた誌面を振り返る

音楽雑誌『Player』休刊に寄せて

 そして、『Player』といえば、広告の多さでも知られている。ピーク時には「取材記事よりも広告ページのほうが多いのでは?」と揶揄されることもあった。楽器メーカーやブランドによる新製品広告はもちろんのこと、一際目を惹いたのは小売店広告である。インターネットのない時代、ヴィンテージや中古品といった一点モノやセール品、目玉商品をいち早くチェックする目的で購入する読者も多かった。編集部が小売店へ出向き広告掲載用の写真を撮影することもあった。年末年始のセール期を迎える1月号は広告ページが多く、毎年分厚くなるのがお決まりだった。

 広告は何も楽器小売店だけではない、練習スタジオもそうだ。「どこどこの駅前に新しくスタジオができた」「あそこのスタジオには(ローランドの)JCとマーシャルだけじゃなくて、メサ・ブギーのアンプがあるぞ!」なんて、スタジオの広告を見ながら電話したものだ。

 『Player』に限らず、残念なことに昨今、紙媒体の休刊や廃刊のお知らせが増えている。販売数の減少なども理由のひとつに挙げられるが、今回の『Player』休刊に関しては“広告売上の大きな落ち込み”を理由としている。2022年に季刊化、「幸いにも大幅な値上げをしても本の販売部数はさほど落ちることなかったことでここまで続けられました」と北村編集長は述べている。実際、値上げはしたものの「紙質が上がって高級感が出た」と好意的な意見は多かった。そもそも、ロック、ギター、楽器という、趣味嗜好の強い分野であり、掲載内容を見ても比較的年齢層の高い読者層の雑誌であるために、値上げによる販売数に関しては大きな変動は見られなかったのかもしれない。ただ、ユーザーの所有欲を満たせても、別の要因で休刊せざるを得ないことがあるという、媒体における広告の重要度を深く考えさせられる事案だ。

 インターネット広告が中心になっている現代。販売はECサイトのほうが早く、新製品のレビューは動画サイトのほうが直感的にはわかりやすい。雑誌広告の影響力は昔ほどないのかもしれない。しかしながら、写真や文字から想像を膨らませるワクワク感は変え難く、後世に伝えていきたい感覚だと思っている。それは自分がこうしてライターという文字を書く仕事をしているからなおさらそう思うのだ。

 「楽器と音楽の相互作用を語る」というポリシーのもと、楽器愛好家に愛されてきた『Player』。あくまで今回は休刊であり、復刊を目指しているとのこと。この先のことはまだわからないが、ひとまず休刊前のラスト号『Player 2023年Summer号』は7月5日発売である。55年愛されてきた音楽機材誌、ラストの表紙を飾るのはこの人しかいないだろう。ギターの神様、エリック・クラプトンだ。

参考出典:会社沿革 – Playerの歴史について

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