『HUNTER×HUNTER』移り気リモコン、もしもテレビ、幸福通帳……別漫画になりそうなグリードアイランド編の面白アイテム

「週刊少年ジャンプ」での週刊連載を終え、現在は新しい掲載ペースを模索しながら制作が続けられている人気漫画『HUNTER×HUNTER』。3月9日に作者・冨樫義博氏の公式Twitterで「401話」の完成が報告されて以降、進捗状況は明らかになっておらず、連載再開のアナウンスがまたれている。

 とはいえ、ファンが長期休載に慣れていることもあってか、張り巡らされた伏線や多彩なキャラクター、過去のエピソードの謎や魅力について現在も活発に議論が行われている。なかでも、何年経っても盛り上がれる“ネタ”になっているのは「グリードアイランド編」に登場した「カード」の面白さだ。

 念のため説明しておくと、「グリードアイランド」は作中に登場するゲームで、起動すると現実に存在するゲーム世界に転送される。プレイヤーは一般的には強者の部類に入る念能力者に限られ、またゲームの外に“帰還”するためのハードルがそれなりに高いため、基本的に命懸けでプレイすることになる。この世界を生き抜くために必須の「スペルカード」(魔法のようなもの)とともに、イベント等で入手できるアイテムとして「指定ポケットカード」が存在し、これを100種類コンプリートするとゲームクリア。報酬として、そのうち3枚を現実に持ち帰ることができる、というルールだ。

 カードはグリードアイランド制作者の念能力で作られていると見られ、仮想空間ならまだしも、どんな能力を使えば現実にこんなお宝アイテムを再現できるのか……と考えると、それだけで休載期間を乗り切れそうなくらい頭を悩ませることになる。ただ、単純にカードの内容が面白く、「自分だったらどの3枚を持ち帰るか」と妄想するのも楽しいが、このカードがあれば別の漫画ができてしまいそうな設定の妙を味わうのも一興だ。

 例えば、No.028『移り気リモコン』。「他人が他人へ抱く10種類の感情を10段階の強弱で操作できる」というもので、「他人が自分へ抱いている感情は操作できない」という制約も面白い。『デスノート』の夜神月のような人物が使えばえらいことになりそうだが、このチートアイテムを手に入れた人物が、他人と一切のコミュニケーションを取らず目的を達成する……ような物語に落とし込むと複雑な人間関係が見られる作品になりそうだ。

 あるいは、No.013『幸福通帳』。「日々のささやかな幸運を使わずにこの通帳に貯めておくと、その運を金額に換算して引き出すことができる」というもので、短編のアイデアとしても興味深い。「日々のささやかな幸運」がすべて排除されたとき、意外と深刻な問題が起きそうな気もするし、人生の最期の1日まで“貯運”を続けたら何円貯まり、これまで諦めてきた幸運を取り戻すだけのことができるのかーーという物語も見てみたい。

 好奇心を刺激されるのは、No.024『もしもテレビ』。国民的コミック&アニメ『ドラえもん』に、世界を好きなように改変できる実験装置のような秘密道具「もしもボックス」が登場するが、「もしもテレビ」の効果はもう少し限定的で、「付属のリモコンに『もしも~なら』という文章を入力すると、その結果を1~30時間のドキュメンタリー形式の番組にして放映する。録画も可能」というもの。あらゆることに対して高精度のシミュレーションができそうで、用途が幅広いだけに派生する物語も多く生まれそうだ。

 No.055『仕返し商店』は、「店主に日頃の恨みを告白すれば、その程度に応じて恨んでいる相手に報復してくれる。金額を上乗せすることで、より重い仕返しも可能」と、昨今人気の復讐/リベンジ系作品のモチーフにピッタリだし、No.062『クラブ王様』(この店の中にいる間は、店内の誰もが命令を聞いてくれる。ただしこの店での1時間は店外の1日を意味する)、No.065『魔女の若返り薬』(1粒飲めば1歳若返る薬。若返るのは肉体のみで、知識、記憶はそのまま残る。年以上の数を飲むと死んでしまう)などは、そのまま『笑ゥせぇるすまん』の1エピソードになりそうだ。

 人気漫画のスピンオフ作品が多く登場している昨今、「グリードアイランド」をめぐるストーリーも読んでみたくなってしまう。その前に『HUNTER×HUNTER』の再開を……と願うのは当然だが、新体制で物語が安定的に進むことを期待しつつ、想像を広げながら気長に待ちたい。

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