『HUNTER×HUNTER』フィンクスの“廻天”は強いのか? 休載中に考える念能力の真価

 「週刊少年ジャンプ」での週刊連載を終え、現在は新しい掲載ペースを模索しながら制作が続けられている人気漫画『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)。連載再開が待ち遠しいが、ファンは長期休載に慣れており、張り巡らされた伏線や、多彩なキャラクターについていまも議論が続いている。

 『HUNTER×HUNTER』の主要キャラクターは独自の「念能力」を持っており、「ハンター」という多くのバリエーションがある“職業”に必要なスキルとして、ユニークなものが多い。そのなかで、バトルに特化して考えたときに、強いのか弱いのか、議論が分かれる能力がある。作中屈指の強者で構成される「幻影旅団」のメンバー、フィンクス=マグカブが操る「廻天(リッパー・サイクロトロン)」だ。

 「廻天」は非常にシンプルな能力で、「腕を回すほどパンチ力が増大する」というもの。コミックス22巻収録のエピソードで披露され、普通の人間では太刀打ちできない屈強なキメラアント兵を一撃で葬っている。このときは相手が人間を甘く見ており、「冥土の土産にもう一発だけ撃たせてやるぜ」と無防備に時間を与えていたため、一般的な戦闘でどう立ち回りながらどれくらい「腕を回せる」のかは気になるところだが、威力の高さと、青天井に思えるポテンシャルがロマンを感じさせた。

 披露された機会が限定的なため不明な部分が大きく、だからこそ議論を呼ぶ能力である。例えば、腕を回した際に相手がオーラの巨大さに驚いていたことから、威力はオーラに依存していると考えられるが、その限界値が本人のポテンシャル(全力)に収まってしまうのなら。あまり意味がない。「腕を回す」という制約が理屈を超えた加算効果を与えていると考えるのが自然だが、例えば作中最強クラスと言えるキメラアントの王、メルエムを一撃で瀕死にした大量破壊兵器「貧者の薔薇」レベル、つまり核爆弾のような威力にまで到達することが可能なのか……と考えると、非現実的な回数腕を回すか、別の制約がないと釣り合いが取れない気がする。

 威力が青天井に近いと仮定した場合でも、「最強クラスの能力」と言えるかどうかはわからない。例えば、「事前に腕を回しておく」という“威力のストック”は可能なのか。だとすると、完全に存在感を消す能力「神の不在証明」(パーフェクトプラン)を持つメレオロンとの共闘も含め、確実な不意打ちが可能な戦術において無敵になるが、面白みがない。

 「相手の視界に入ったまま腕を回す」や、「腕を回し終えた後、○秒以内に殴る」「タイマンの場合のみ発動可能」のような条件は普通にありそうで、“切り札”というより元々の高い戦闘力を補強する一つの選択肢と考えると、なかなか面白いスキルだ。いずれにしても、フィンクス自身がもったいぶらずに使用していることから、「ハマれば最強の特殊能力」というより、「戦闘に駆け引きを生む普通に強い能力/切り札にするには不便でさほど強くない能力」と言えるのではないか。

 『HUNTER×HUNTER』は群像劇であり、主人公のゴン=フリークスも登場しなくなって久しい。そんななかで、フィンクスは登場機会が確保されており、その実力を披露する機会もありそうだ。願わくば、敵対関係を深めているヒソカに瞬殺されてしまう……ような形ではなく、まだ謎の多い能力を発揮してもらいたいものだ。

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