『地獄楽』を象徴する「異形」の存在、師匠・藤本タツキ『チェンソーマン』との共通点と違いを考察
人気漫画『地獄楽』を原作としたTVアニメの放送が4月1日から始まり、大きな注目を浴びている。同作にはさまざまな見どころがあるが、なかでも印象的なのが、恐ろしくも美しい“異形”たちの存在だ。
異形の表現は作者・賀来ゆうじのイマジネーションによって生み出されたものであり、唯一無二の産物と言える。しかしその一方で、『チェンソーマン』で知られる漫画家・藤本タツキと通じる部分も感じざるを得ない。
まずは、あらためて作者の経歴を振り返ってみよう。元々、賀来は下積み時代に藤本のアシスタントを務めていたことで知られる。『ファイアパンチ』の連載を手伝っていたとされ、Twitter上では「僕にとっては作画も作劇も両方とも学びの多い職場でした」と多くの刺激を受けたことを明かしていた。
さらに『チェンソーマン』の3巻発売記念として、「少年ジャンプ+」で企画されたインタビューでは、賀来が自身と藤本の共通点について語ったことがある。
賀来いわく、デザインについての好みが似ているとのことで、表面的なディティールではなく、本質の部分にこだわったデザインに惹かれるという。そうした表現について「強度が高い」とも表現しており、『チェンソーマン』のデザインにも大きな刺激を受けたそうだ。
たしかに『地獄楽』の舞台となる神仙郷には、強度に満ちたデザインの生き物がひしめいている。現在放送されているアニメの範囲でも、人面蝶から始まり、口から人間の指が生えたムカデ、目から腕が飛び出した巨人、6本の腕で合掌する半魚人などが登場していた。
いずれも奇妙な見た目だが、人面+蝶、指+ムカデ、仏教+魚など、構成要素としては意外とシンプルだ。それでいて、この世の常識が通じない神仙郷の雰囲気をわかりやすく表現しており、まさしく“強度”を感じさせる。