絵本作家・長野ヒデ子のロングセラー絵本が刊行30周年「おかあさんが輝いている絵本をつくりたい」

長野ヒデ子のロングセラー絵本が刊行30周年

 絵本作家の長野ヒデ子が1993年に刊行した『おかあさんがおかあさんになった日』(童心社)は、おかあさんの視点から、期待と不安でむかえるはじめての出産の1日を描いた絵本。「あかちゃんがうまれる絵本」ではなく、おかあさんになる幸せ、生きるよろこびが描かれた「おかあさんがうまれる絵本」として多くの共感を集め、版を重ねるロングセラー絵本となっている。

 刊行後の反響が大きく、著者・長野のもとにも、たくさんの愛読書はがきや手紙が届いたという本作。そこには、自分の体験と重ね合わせて、いろいろな想いが書かれていたそうで、生命の誕生にはひとりひとりのドラマがあることを、あらためて感じたという。その中で、長野は字も読めない小さな子どもたちが、くりかえしこの本を読んでくれていることを知った。以下、インタビューからの抜粋を紹介する。

 この本を出したいって編集者に言ったとき、編集者が「小学校なんかで、性教育の導入部分に使えると思うので、ぜひ出版しましょう」と言ってくれたんです。でも私は、これはもっと小さな子が読んでくれるんじゃないかと思っていたんです。

 絵本が出たら、愛読者カードから、字が読めないような小さな子がなんどもなんどもくり返し読んでくれていること、図書館でも、小さなお子さんを持つ家庭で、なんどもこの本を借りてくれていることを、図書館の方からも教えていただきました。

 でも、それはなぜなんだろうと不思議に思うようになりました。

 それで、産婦人科の先生や、心理学の先生など、いろんな先生方に聞いてみたんです。そしたら、「子どもは生まれる話が好きなんだ」とおっしゃるんです。「どうしてですか」と聞いたら、「自分がいかに望まれて生まれてきたのか」子どもはこころのどこかで確認したいと思っているらしいのです。

 この絵本は、そのことがわかるように描かれている。自分が望まれて生まれてきたことを確認することが、子どもにとって生きる力になる、そう言われたんです。

 赤ちゃんが生まれる絵本はいろいろあるけれど、おかあさんがおかあさんとしてあるがままに輝いている絵本を創りたい、自分のためにも、子どもためにも、あるがままのおかあさんでいてくれることが、子どもは嬉しいのですもの。

 私はよく失敗もして、子ども達に迷惑かけてばかりのおかあさんだけど、やっぱりおかあさんです。おかあさんになったのではなく、おかあさんをさせてもらっている。子どもに育ててもらっているのだ。私もおかあさんとして、あかちゃんと共に生まれたんだ! こんなおかあさんの気持ちを絵本にしたのがこの絵本です。

 難しいことはわからなくてもこの気持ちが子どもにもちゃーんと伝わりわかるのですよ、不思議ですね。だからくりかえし何度も何度も読んでくれた、あかちゃんにもありがとうといいたいです。

 今、おかあさんが元気に輝いて、おかあさんであることを楽しんでほしい。そのことで子どもも元気が出るのです。(以上、長野ヒデ子インタビューより抜粋)

書誌情報

書名:おかあさんがおかあさんになった日
さく:長野ヒデ子
初版:1993年7月15日
定価:1,430円 (本体1,300円+税10%)
ISBNコード:978-4-494-00859-9

▼また、姉妹作に以下の2作がある。

 書名:おとうさんがおとうさんになった日
 さく:長野ヒデ子
 初版:2002年5月10日
 定価:1,430円 (本体1,300円+税10%)
 ISBNコード:978-4-494-00897-1

3人目の子どもの自宅出産の1日を、おとうさんの視点から描いた絵本。子どもたちそれぞれの誕生の思い出と、おとうさんになっていく喜びが、あたたかく描かれている。

書名:おばあちゃんがおばあちゃんになった日
さく:長野ヒデ子
初版:2015年2月20日
定価:1,430円 (本体1,300円+税10%)
ISBNコード:978-4-494-02563-3
 
あかちゃんが生まれて、おかあさんはおおいそがし。でもだいじょうぶ!「おばあちゃんが おてつだいにきたよ!」おばあちゃんの視点から家族の絆を描く、楽しいおばあちゃん応援絵本。

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