【推しの子】原作とアニメの違いは? 映像で強調された魅力と、漫画ならではの表現を考察

 4月12日よりTV放送が開始されたアニメ『【推しの子】』。80分を超えるボリュームで放送された第1話は、原作コミックス第1巻のエピソードを描く内容だった。漫画アプリ「少年ジャンプ+」で好評を博してきた本作の世界観は、アニメでどのように表現されたのか。本稿では漫画とアニメ、それぞれの『【推しの子】』の魅力について考察したい。

アニメ特有の表現と原作漫画を想起させるシーン

 アイドルグループ「B小町」不動のセンターとして活躍するアイ。彼女を“推す”産婦人科医・ゴローの元へ訪れたのは、お腹に双子の赤ちゃんを宿したアイ本人であった。ゴローはアイの妊娠が公にならないよう協力するが、出産間近に何者かに刺殺されてしまう。しかしゴローはこの世を去ることはなく、目を開けるとアイの生んだ子ども・愛久愛海(あくあまりん、以下アクア)に転生していてーー。

 ゴロー改めアクアは、双子の妹・瑠美衣(るびい、以下ルビー)とともに、アイドルとして成長していくアイとの日々を過ごしていく。アイやアクア、ルビーのチャームポイントとして、瞳に浮かんだ星型の模様が挙げられるだろう。アニメではまるで一番星が輝く夜空のように、色彩豊かな瞳として描かれた。作品の核心をつくシーンで輝きを放つ彼女たちの瞳は、ときに3人の美しさやカリスマ性を強調しつつ、ときに得体の知れない不気味さを醸し出す。そんな演出で、原作に増して彼らの魅力がスケールアップしている印象だ。

 アニメ特有の表現として色彩が豊かになること以外に、当然ながら声優の演技による聴覚情報の付与も挙げられる。アクアたちが子役として撮影現場に赴いた際、名の知れた天才子役・有馬かなはアクアの演技力に悔しさを覚え涙をこぼす。彼女の演技によって、アニメ『【推しの子】』では有馬かなの感情や子どもらしさがより鮮明となったと感じる。

 映像作品として『【推しの子】』の世界観が表現されたアニメ第1話であるが、原作漫画の表現を忠実に再現したシーンも多く存在した。妊娠を公表せずアイドル活動を続けることをゴローに話したアイは、笑みを浮かべながら「嘘は/とびきりの愛なんだよ?」と発した。笑みを浮かべた顔の角度など、漫画とほぼ同じ構図で描かれており、原作ファンは初見時のインパクトを思い出しただろう。

 そのあとにゴローも笑みを浮かべるシーン、オタ芸を披露してしまったアクアとルビーを目にしてアイが満面の笑みを浮かべるシーンなど、原作漫画と同じ構図で描かれたシーンは多い。アニメ『【推しの子】』第1話はアニメ特有の表現によって作品の世界観を拡張しつつ、随所に原作漫画を追体験させるシーンも存在していた第1話であったと言えるだろう。

原作漫画と共に楽しむアニメ『【推しの子】』

 原作漫画を映像作品として巧みに表現したアニメ第1話であったが、アニメでは描かれなかったシーンも存在する。コミックス第1巻ではエピソードの冒頭に何者かが登場人物にインタビューを行うシーンが描かれている。各インタビューパートは本編の時間軸と少々異なっており、作品の謎めいた部分を知る手がかりとなるようなものばかりだ。

 またアニメでは「嘘は/とびきりの愛なんだよ?」と話すアイに対し、ゴローは「僕はどうしようもないほど君のファンだ」と心の中でつぶやいた。この場面も原作漫画とほとんど同じ展開のまま描かれたシーンであるものの、原作漫画で「ファン」は「奴隷」という単語のルビとして書かれている。キャラクターたちの深層心理や本心は、漫画版によく現れているかもしれない。

 鮮やかな色彩や声優の巧みな演技によって表現されたアニメ『【推しの子】』。物語の謎が深まっていくこれからの展開を占うために、そして揺れ動く登場人物の心情を深く知るために、本作は原作漫画と共に楽しみたいアニメ作品であろう。

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