OKAMOTO’Sオカモトショウが語る、2023年注目の漫画たち 「『サターンリターン』はすごいです」

オカモトショウが語る2023年読むべき漫画

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。前回に続き、2023年の要チェック作品をずらりとピックアップしてもらいました!

豊作の「マンガ大賞2023」ノミネート作品

——前回に引き続き、ショウさんが“今”注目している作品をどんどん紹介していただきたいと思ってます。まずは『ブルーロック』(原作/金城宗幸 作画/ノ村優介)。日本中から才能のある300名の高校生フォワードを集め、“ブルーロック”と呼ばれる施設で過酷な選抜を行うというストーリーのサッカーマンガです。

 “日本のサッカーの弱点は強烈なエゴイズムを持ったストライカーがいないこと”という信念で、たった一人の最高のストライカーを決めるプロジェクトを描いた作品ですね。原作者の金城さんは『僕たちがやりました』『ジャガーン』などを作った人なんですけど、『ブルーロック』は、普段はそんなにスポーツマンガを読まない層を狙ったんじゃないかと思っていて。すごく能力のある人たちが争うんですけど、妙にリアルなんですよ。“選ばれるのは一人だけで、それ以外の人間はサッカーを辞めなくてはいけない”という設定で、個人的には、20代後半くらいの人に刺さるような気がしています。それくらいの年齢って、社会に出てしばらく経って、「自分はここまでやれると思ってたけど、ぜんぜんダメだった」みたいな経験をしていると思うんです。大人になるにつれて責任も増えるけど、まだまだ自分の殻を破らなくちゃいけない。そういうときの気持ちと重ねるんですよね、『ブルーロック』は。

——なるほど。『ブルーロック』は海外でも人気があって、SNSでは「三苫薫は『ブルーロック』出身か」みたいな書き込みもあります。

 現実とリンクしちゃってますよね。「ブルーロック」を読んでサッカーを始めた子のなかから、本当にすごいストライカーが出てくるかもしれないし。そういえば金城さん、OKAMOTO’Sの10周年の武道館ライブに来てくれたんですよ。「すごくよかった」って言ってくれて、ライブにインスパイアされたシーンを描いてくれたんです。「Dancing Boy」ってタイトルをその話につけてくれてたみたいで、うれしかったですね。サッカーマンガでいうと、去年の12月に始まった『カテナチオ』(森本大輔)もいいですよ。こっちはディフェンダーの話で、泥臭い努力を重ねながらイタリアリーグで活躍するプレイヤーが主人公。絵柄も独特で、かなり気になってます。

——ショウさんがスポーツマンガを紹介するのはレアですね。

 面白いスポーツマンガが多いんですよ、最近。『4軍くん(仮)』(原作:森高夕次 作画:末広光)もおすすめです。主人公は大学野球の4軍にいて、先輩たちは野球よりも就活とかコンパに興味があって。「こんなもんかな」と思ってるときに、突如として“3軍 VS 4軍”の試合がはじまって、野球に熱くなれるチャンスが来るんですよ。原作の森高さんは『グラゼニ』を手がけた人ですね。

——スポーツマンガ系以外ではどうですか?

 いろいろあるんですけど、『サターンリターン』(鳥飼茜)はすごいです。主人公は、スランプに陥ってる女性の小説家。「30歳になるまでに死ぬ」と言っていた学生時代の友達が本当に死んでしまって、担当編集者と一緒に死の真相に迫るというストーリーなんですが、不穏な雰囲気ではじまって、徐々に物語が大きくなって。ラストに向けてスピード感が上がっていく感覚がすさまじいんです。キャラクターが生まれ変わっていく感じがあって、全員が生き生きと動き始めるタイミングで、いくつかのことが明かされていくんです。鳥飼さんの『先生の白い嘘』の終わり方も素晴らしくて。以前、お会いしたときに「最後はどこまで計画していたんですか?」と聞いてみたら、なんと「描きながらエンディングを考えます」とおっしゃってました。

——そうなんですね!

 すごいですよね。ぜんぜん違うマンガなんですけど、最近スタートした『住みにごり』(たかたけし)も紹介したくて。いい意味で、めっちゃ気持ち悪いんですよ(笑)。市主人公は20代後半の男で、久しぶりに実家に帰ったら、引きこもり気味の兄がやばいことになってるという話なんだけど、家族全員が歪んでるんです。こういうタイプのマンガって、誰かひとりはまともで、その人の視点から家族を描くことが多いと思うんだけど、『住みにごり』は全員がやばくて、感情が混線しまくってる。その気持ち悪さが気になってます(笑)。

——マンガシーン全体の傾向についてはどうですか?

 簡単には言えないですけど、誌面ではなく、ウェブやアプリからヒット作が出ている傾向は続いてますよね。特に「少年ジャンプ+」からは『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)、『ダンダダン』(龍幸伸)、『怪獣8号』(松本直也)、『正反対の君と僕』(阿賀沢紅茶)などのヒット作がどんどん出ていて。それ以外にも『光が死んだ夏』(モクモクれん)、『日本三國』(松本いっか)もネット発ですね。作品単体で勝負しなくちゃいけないので、尖った作品が増えているのかな、と。その結果、紙の雑誌の色が出づらくなっているのかもしれない。

——なるほど。『ONE PIECE』(尾田栄一郎)が終盤に入った「週刊少年ジャンプ」も過渡期にあるのかも。

 そうかもしれないですね。とはいえ、『呪術廻戦』(芥見下々)や『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平)、『アンデッドアンクラック』(戸塚慶文)も面白いし、やっぱりすごいなと思いますけどね。落語を題材にした『あかね噺』(原作:末永裕樹 作画:馬上鷹将)も光っていて。2023年は誌面でも、新たな黄金世代を作る作品が出てくるといいなと思っています。

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