人気妖怪漫画家の新作がまさかのバニーガール少女? 意外な展開もファンが安心した緻密な作画とタイトルの由来
アニメ化もされた『もっけ』などの代表作で知られる漫画家・熊倉隆敏の最新作『つらねこ』の第1巻が2月20に発売された。表紙はバニーガール姿の女の子、知里の絵が目を引く。「青騎士」で連載されている本作は、これまで妖怪漫画を手掛けてきた熊倉の集大成的な作品になりそうだ。
中学生の知里(チビちゃん)は、生まれた町にある御神木から2km以上離れることができない。車や自転車で外に出ようとしてもアクシデントが発生、徒歩で移動すると2km先に行くことはできずにUターンしてしまう。外の世界を見てみたい、そんな悩みを抱える知里がネットで繋がったのが、眼鏡をかけた謎めいた女性、六尺先生だ。
六尺先生は知里の悩みを解決するため、「ネ」という世界の存在を明らかにする。それは一般に“死んだ人の国”や“お化けの世界”などと言われているもので、現実世界とお互いに影響し合っている不思議な空間なのだという。六尺先生は知里を外の土地に行くための抜け道「ネドコ」に案内する。知里は外の世界に行くことができるのだろうか?……というのが第1話、冒頭のあらすじだ。
熊倉の漫画といえば、『もっけ』に代表されるかわいらしい女の子と、独特な世界観が見どころである。本作でも存分にその魅力を楽しむことができる。
「背景も自分で描きたいという想いがあって、現状、お手伝いを入れずに一人で描いています。ちょうど、『もっけ』の初期数巻を作っていたころを思い起こさせますね」と熊倉が話すように、緻密な作画は健在である。
知里のキャラクター設定は熊倉の趣味であるご当地キャラ、岐阜県郡上八幡のおよしちゃんからインスパイアされている。およしちゃんは土地神のような存在で、城の半径900m圏内しか行動できない。ところが、紅葉が鮮やかに色づく期間は行動範囲が約1.5倍に広がるという設定がある。
「およしちゃんを知った頃に何となく近い設定で漫画のネタが浮かんでいて、彼女から多分にアイデアの補強をさせて貰ったのでした。なので『つらねこ』はおよしちゃんインスパイア作品といっても過言じゃありません!」と、熊倉は語っている。
また、熊倉が好みと話すコスプレの要素も全開だ。知里は六尺先生から、第1話で無理やりバニーガールのコスプレをさせられる(しかも知里のサイズを事前に調べて特注したものだ)。それはネドコに棲息する「ネズミ」は、動物やお化けの格好をしている人間は同類と思い、攻撃してこない性質だからなのだとか。それにしても、なぜバニーガールなのか。
「他社でネームが通らなかった時期に、手を動かすためのリハビリのつもりでいろいろな絵を描いていました。バニーガールが漁港にいるような絵を描いたら、バズりまして。これがきっかけで編集者から声をかけてもらい、『つらねこ』に繋がりました」
という経緯でバニーガールを描くことになったそうだが、知里は5話ではロリイタ服を、1巻には収録されていないが、続く6話はキョンシーの衣装を着ている。作中にはかわいい学校の制服や巫女装束を纏っている場面もあるし、知里の衣装の変化も本作の見どころになっている。
今後の展開はどうなるのか。熊倉は、「自分でもボンヤリですが、あんまり暗い話にはしたくないなと思ってます」と話す。知里の活躍と異世界の旅、千変万化のコスプレに注目したい。
なお、『つらねこ』というタイトルの由来も気になる。“豆良禰古”とも書き、豆良は連なる、禰は鼠(ネズミ)、古は小さいことを意味し、“数万の鼠が集まって妖しげな振る舞いをする”というニュアンスがあるようだ。こうしたタイトルのセンスにも、妖怪に精通する熊倉らしさが表れている。
“ご当地萌えキャラ”の魅力 コレクターの漫画家・熊倉隆敏が語る 最新作『つらねこ』との関係性
現在、『青騎士』で『つらねこ』を連載中の漫画家・熊倉隆敏。妖怪に造詣が深く、アニメ化された妖怪漫画『もっけ』などの作…