著書はベストセラー含めて3100冊以上 幸福の科学・大川隆法の出版事業を振り返る

大川隆法の著作を振り返る

  新興宗教団体「幸福の科学」の創始者で総裁の大川隆法氏が3月2日に死去した。66歳だった。

 大川氏は、1981年に大悟し、人類救済の大いなる使命を持つ「エル・カンターレ」であることを自覚。1985年より父・善川三朗とともに出版活動を始め、同年に初めての著書『日蓮聖人の霊言』(善川三朗編、潮文社)を刊行。以降、『空海の霊言』『キリストの霊言』など歴史上の宗教家や哲学者を降霊させて執筆したとされる「霊言」シリーズを次々と刊行し、1987年には幸福の科学の宗教理論の基本書であり、大ベストセラーとなった『太陽の法』を著している。2022年11月には、著作の発刊点数は全世界で3100書を超えたとされており、その累計発行部数は9000万部以上とも言われている。2021年末に刊行された「法」シリーズの最新作『メシアの法』が、2022年のオール紀伊國屋書店の年間ベストセラーで1位となるなど、大川氏が今なお出版業界では無視することのできない大ベストセラー作家であることは間違いない。

 「霊言」シリーズは、初期の頃は前述のように宗教家や哲学者のものが多かったが、次第にバラエティー豊かになり、その時々のニュースバリューを的確に捉えた迅速な刊行も話題となった。

 芸能人の守護霊とトークするというシリーズのなかでは数々の大物有名人との霊言を繰り広げていて、エンタメ界の重鎮であり史上最高のポップスター、マイケル・ジャクソンを降霊させたことがあったのも記憶に新しい。

  直近では世界情勢を鑑みた硬質なものも多く出版しており『ウクライナ侵攻とプーチン大統領の本心』『ゼレンスキー大統領の苦悩と中国の野望』『金正恩 ミサイル連射の真実』など政治性の強い霊言もあり、ジャンルを多岐に横断している。

 UFOや超古代文明など、オカルト好きにはお馴染みのテーマも大川氏の著作は多く『UFOリーディング 救世主を護る宇宙存在ヤイドロンとの対話』(2021年)では、マゼラン銀河・エルダー星の宇宙人であるヤイドロンと人類の危機について話している。そんなヤイドロンとともに重要な宇宙人として紹介されるのは、射手座・インクルード星のヤギ型宇宙人であるメタトロンだ。『メタトロンの霊言』(2019年)によると、なんと彼らは6500年前に地球を訪れているという。また、『公開霊言 超古代文明ムーの大王 ラ・ムーの本心』では、1万7千年前に存在した神秘と科学が融合した「ムー文明」について記されていて、そこには宇宙人技術が関係していたとされている。併せて読むと、壮大なストーリーが浮かび上がってきそうだ。

 大川氏は他にも書き下ろし教養小説「鏡川竜二」シリーズや『妖怪にならないための言葉』(2023年)などの自己啓発本を数多く手がけてきた。音楽、映画、アニメ作品なども数多く発表しており、幸福の科学がエンタテインメント性を重視したメディア戦略を採ってきたことが窺える。幸福の科学は、出版型のビジネスモデルをもつ宗教であり、その構造は同教団以外にも広く見られるものだ。書籍の売上ランキングで宗教関連/スピリチュアルの書籍がランクインするのが常態化して久しいし、書店にも平積みで大川氏の書籍が数多く並んでいることもある。そのような状況をどう捉えるべきか。大川氏の出版戦略には、出版不況と言われて久しい業界のねじれ構造も起因していると言えるのではないだろうか。

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