休刊号「週刊ザテレビジョン」を読む  “レモン“を持たない長渕、最多表紙のキムタク……41年間の世相を俯瞰できる保存版だ

 KADOKAWAが発行する老舗のテレビ情報誌で、1982年の創刊以来約41年の歴史をもつ「週刊ザテレビジョン」が、3月1日発売号をもって休刊となった。今後は「月刊ザテレビジョン」と統合を図り、3月24日からは新たな「月刊ザテレビジョン」としてリニューアルされる。

 日本雑誌協会のデータによれば、2022年10月~12月の平均発行部数は約12万8124部であった。なお、「月刊ザテレビジョン」は約24万342部。

 3月1日発売の最終号は「41年間ありがとう」と銘打ち、これまで表紙を飾った著名人へのインタビューも盛り込まれた豪華な仕様になっている。1982年の記念すべき創刊号を飾った薬師丸ひろ子のインタビューは必見だ。同誌はレモンを持った著名人の表紙でお馴染みだが、レモンを最初に持ったのも薬師丸なのである。なお、レモンになった理由は、「新鮮さの象徴」であり、「レモンのようにフレッシュな情報をお届けしたい」という編集部の思いが込められているのだという。

 また、長渕剛はこれまで4回表紙を飾っているが、1回目、2回目はレモンを持たずに登場。2013年、3回目の登場にしてついにレモンを持ったことが話題になった。その理由は……? 長渕本人へのロングインタビューが掲載されているので、本誌を購入して楽しんでいただきたい。

  本誌の最大の見どころは、歴代の表紙が並んだページである。表紙の人物は「その時、一番旬な人」というコンセプトで選ばれるといい、必然的に日本の芸能史、テレビ史をなぞることができるようになっている。1985年に阪神タイガースが歴史的な優勝を果たした際は、最強助っ人として名高いバースが表紙を飾った。相撲界が若貴ブームに沸いた1991年は貴花田(のちの貴乃花)、1999年は西武ライオンズの松坂大輔が登場し、スポーツ界の歴史をも反映している。

 なお、気になる表紙をもっとも飾った著名人は木村拓哉で、なんと100回にもなる。1000号の節目も木村が飾っており、その存在の大きさが理解できよう(ちなみに1500号は嵐だった)。他にも異色の表紙として、ミッキーマウス(しっかりレモンを手にしているのだ)、ガンダム、ダイアナ妃、ちびまるこちゃん、『ONE PIECE』のルフィが登場した号もある。

 さて、「週刊ザテレビジョン」は休刊になったものの、今後は「月刊ザテレビジョン」に集約されていくということで、内容のさらなる拡充が望まれる。筆者の知り合いの写真家は、「90年代は人気のあるアイドルを表紙に使うだけで、雑誌の実売が20万部違うこともあった」と話すが、現在は読者の嗜好の多様化から、圧倒的な影響力をもつアイドルや人気俳優がいなくなってしまった。著名人頼みの雑誌作りが限界になっているからこそ、編集者やライターの企画力がこれほど試されている時代はない。

 テレビ雑誌「テレビブロス」でライターと編集を手掛けていた中川淳一郎がリアルサウンドブックのインタビューで述べていたように、「テレビそのものの影響力はまったく衰えていない」のである。「どんなにネットが普及しようとも、依然として“テレビが最強”であることに変わりはない」と、中川は述べる。テレビの番組表はネットでも入手できるし、それこそテレビ上でも閲覧できるようになった。テレビ情報誌が生き残るためには、番組表以外でネットと差別化を図っていく必要があるだろう。

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