『代紋TAKE2』『ゴールデン・ガイ』の漫画家・渡辺潤 任侠漫画の人気作家はなぜ萌え絵を描き始めた?

『代紋TAKE2』は原作・木内一雅、作画・渡辺潤のコンビで連載された。単行本全62巻。

 1989年のデビュー以来、『代紋TAKE2』から『三億円事件奇譚 モンタージュ』など、数々のヒット作を送り出してきた漫画家、渡辺潤。来る2月27日には、現在「週刊漫画ゴラク」で連載中の『ゴールデン・ガイ』第8巻が発売される。

 実に33年に渡って漫画を描き続ける渡辺は、進取の精神を常に忘れない漫画家でもある。特に、近年はTwitterに定期的にUPされる萌えキャラのイラストでも人気で、若い世代のファンも獲得している。

 それにしても、任侠漫画で評価が高い渡辺が、なぜまったく異質といえる萌えイラストを描くのだろうか。そこには、ファンとの交流を楽しむ渡辺の純粋な気持ちだけでなく、旺盛な好奇心に起因する飽くなき探求心、さらには女性キャラクターの描写で編集者から投げかけられた言葉との葛藤など、実に興味深いエピソードがあった。

『ゴールデン・ガイ』第8巻。©︎渡辺潤/日本文芸社

雑談から生まれた『ゴールデン・ガイ』

――『ゴールデン・ガイ』は徳川埋蔵金を巡って任侠の面々が抗争を繰り返すという、異色の作品です。

渡辺:僕がこれまで描いてきた漫画のいろいろな要素が詰まった作品だと思います。SF要素の強いヤクザものの『代紋TAKE2』と、ミステリー要素のある『三億円事件奇譚 モンタージュ』を足して2で割ったような作品とでも言えばいいでしょうか。

――作品のアイディアは、どこから生まれたのでしょうか。

渡辺:「週刊漫画ゴラク」の編集さんとゴールデン街の飲み屋で、徳川埋蔵金を奪い合う物語はどうだろうと盛り上がったんですよ。1ページ目に(徳川埋蔵金の位置を意味しているといわれる)かごめの歌が出てきて、ページをめくると見開きで拳銃を持った主人公が登場、そして小判を前にドーンと発砲……という、第1話の出だしがその場でできてしまったんですよ(笑)。

――飲み屋での雑談がきっかけだったのですね。

渡辺:僕の場合、雑談の中からアイディアが生まれ、話が立ち上がることがあるんですよ。使わない前提で軽い気持ちで話した10個のでたらめの中に、1~2個使えそうなものがある感じですね。

――そして、インパクトの強いタイトルはひょっとして……

渡辺:その名の通り“ゴールデン街”にかけたものです。はじめの構想では、3巻から5巻くらいでまとめる予定だったんですね。ありがたいことに人気も出てきて、連載を続けさせてもらっています。

――徳川埋蔵金のネタは、以前はテレビでもよく特集されていました。都市伝説などのテーマは、先生はお好きなのでしょうか。

渡辺:都市伝説やUMAが大好きですね。もちろん完全なマニアとは違いますが、テレビでやっているのを広く浅く見る感じでした。探検隊がネッシーを探しに行く話などは結構好きでした。そういえば、『デガウザー』を連載していた時、「ムー」の三上丈晴編集長と対談し、一緒に飲んだこともあるんですよ。

今回のインタビューは渡辺の仕事場で実施した。膨大な量の資料と単行本、壁にさりげなく貼られた矢口高雄ら漫画家のサインが目を引く。

――『ゴールデン・ガイ』の生原稿を拝見させていただきましたが、先生の作画はますます緻密で美しくなっていると感じます。

渡辺:僕は昔ながらの漫画家なので、完全にデジタルに移行はしていないんです。アナログでペン入れをして、それをスキャナで取り込んでベタ塗りや背景の合成などを行っています。コロナ禍以降はアシスタントが仕事場に来ることがなくなり、リモートになっているので、僕が1人で籠って黙々とペン入れを進めています。

――先生は、人物はもちろんですが、爆発もご自身で描かれているんですね。

渡辺:そうですね、爆発は僕が描いていますね。描くのが好きだというのもあるんだけれど(笑)、爆発の煙のニュアンスは、リモートだとアシスタントに伝えるのが難しいんですよ。ほかにも、動いているものや、波や岩などの自然物は指示を出すより僕が描いた方が早いので、ほとんど自分でやっていますね。クルマやビルは僕が描いていたら終わらないので、アシスタントさんにお願いしています。

『ゴールデン・ガイ』第1話の生原稿。人物は渡辺ペン入れまで行い、スキャンしたデータにアシスタントが背景やスクリーントーンを貼り込む。

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