「ChatGPT」メディアで活用の動きが加速 文章を書いてくれるAIはライターの仕事を奪うのか?


 10年、20年先の我々の仕事の在り方や、働き方までも一変させるといわれるAI。これまでは専門職が使いこなすイメージが強かったが、本格的にAIが身近なものになるかもしれない。その可能性を広げると言われるのが「ChatGPT」だ。最近、ワイドショーやニュースでも報道されるので、名前だけなら耳にした人も多いのではないか。2023年1月の時点で、全世界でアクティブユーザー数が約1億人を突破。現在、もっとも使用されているAIチャットボットである。

 ChatGPTは2022年11月30日にプロトタイプが公開されて以来、衝撃をもって迎えられ、既に近年のIT業界にとって革命的なツールと評する識者もいる。かのイーロン・マスクやビル・ゲイツも絶賛している。特にビル・ゲイツはChatGPTに詩を生成させるなど、自身の楽しみのために活用していると話す。これほど早く普及している大衆的なアプリケーションは過去類例がなく、この先10年でAIのコモディティ化が一気に進み、人々が日常的にAIを使う時代が到来すると考えられている。

 いったい何がそんなに凄いのか。最大の特徴は、人間とやりとりしているのと変わらない、自然な会話のキャッチボールが可能な点にある。そして、AIが様々なアイディアを提案してくれるため、クリエイティブな仕事にも活用の幅が広がる可能性が高いことだ。例えば「アニメを宣伝するための魅力的なキャッチコピーを考えてください」と書けば、AIがいくつかのコピーの案を出してくれる。「読者の購買意欲をそそるようなケーキの魅力を伝える原稿が欲しい」などと入力すれば、まるで人間のライターが執筆したような原稿を書いてくれる。仕事の省エネ化が進み、作業の効率化が図れるだろう。

 とはいえ現時点では、ChatGPTが作り出す文章には言葉遣いや事実関係に間違いが多いとも指摘されており、人間のチェックが必要である。しかし、AIは日々学習し、成長していくのだ。時間を経るごとに精度はどんどん上がっていくだろう。それはまるで新人の会社員が仕事を覚えていき、徐々に仕事の質が上がっていく様子と同じである。最終的にはAIが作成したキャッチコピーの選択や、原稿の校正・校閲もAIが担うかもしれない。

 少なくとも、簡単な文章の生成であれば、十分にAIが実用の域に達しているといえる。イギリスの大衆紙「デイリー・ミラー」「デイリー・エクスプレス」などを発行するリーチは、今後、短い記事の作成にはChatGPTの活用を進めていくと発表した。こうした動きは加速しつつあり、アメリカの「バズフィード」のように、既に一部の記事をAIに製作させているニュースメディアもある。雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」「メンズジャーナル」を発行するアメリカのアリーナ・グループも、記事の作成にAIを活用することを発表している。

 今後、報道、出版の分野でAIが担う仕事はますます増加するに違いない。確実に、記者やライターの仕事の一部はなくなると想定される。特にニュースサイトでは、Twitterやワイドショーの情報をまとめた記事や、PR TIMESのプレスリリースを元に執筆された記事などは、AIが担当するようになるだろう。そもそも、企業のプレスリリースの記事自体を、AIが手掛けるようになるだろう。対して、取材を丹念に行って執筆する原稿やインタビューの仕事までAIが置き換えるのは、現実的ではないと考えられる。

 AIの方が得意なことはAIに任せ、人間は人間にしかできない仕事を模索することが、2020年代の人間に課せられたテーマといえるだろう。

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