90歳ひとり暮らし女性が月10万円で楽しく生活できるには? 大人インフルエンサー本が人気の理由
「人生100年時代」という言葉が使われるようになって久しいが、その間、老後の生活に対して十全な対策が取られる社会に変わったかというと心許ない。むしろ物価は高騰するばかりの不景気の時代にあって、将来の不安はいや増していると言っても良いだろう。
こうしたなか、多くの人の抱える漠然とした不安を吹き飛ばす快著が刊行された。『90歳、ひとり暮らしの知恵袋 お金をかけない素敵な毎日の過ごし方』(宝島社)だ。
著者・大崎博子氏は昨年、90歳を迎えた。78歳の時に娘の勧めでパソコンに出合い、その後にスマホまで使いこなすように。2011年からTwitterを始めると、戦争体験者ならではの思いや日々の生活を綴ったツイートが共感を呼び、若者から同年代の人々まで幅広い支持を集めた。今はTwitterのフォロワー数はなんと20万人を超える、一大インフルエンサーである。
本書は、5万部を売り上げた『89歳、ひとり暮らし。お金がなくても幸せな日々の作りかた』に続く、2冊目の著書。ひとり暮らしを謳歌する大崎氏の生活の知恵が、節約、健康、おしゃれなどの6つのジャンルごとに、写真とイラストでわかりやすく紹介されている。日々の生活に彩りを与えるヒントがたくさん詰まった一冊だ。
ひとり暮らしの大崎氏は月々の家賃を含めた生活費は10万円ちょっとで、毎日を楽しく過ごしているのだという。そのような生活を実現できるコツは何だろう。
まずは、パソコンやスマホなどデジタルを巧みに駆使し、お得に節約しながら生活を楽しんでいることが大きいだろう。LINEやTwitterなどの無料アプリを使いこなし、バーコード決済などを使ったキャッシュレス生活でポイントをしっかり貯めている。また、Netflixなどの動画配信サイトを日々チェックし、お気に入りの韓流ドラマを存分に楽しんでいる。サブスクなので、どれだけたくさん見ても定額なのだ。ちなみにシニアにお勧めの無料アプリは、ラジオアプリやニュース・天気予報アプリ、医療系・健康管理アプリなのだとか。これからの時代、シニアライフを充実させるためには、デジタルスキルは必須だと言えそうだ。
さらに大崎氏は家事や掃除のコツなども詳細にわかりやすく伝えてくれる。お米のおいしい炊き方や魚介・肉料理をおいしく作るコツ、ラクして衣替えをする方法やカビ対策方法まで。そこで紹介される生活の知恵はかなり幅広く充実しており、自分の生活にすぐに取り入れられる実践的なノウハウが満載だ。
「毎日がすごく幸せ」だと言う大崎氏だが、周りからは「どうすれば、高齢になっても幸せでいられますか?」とたびたび聞かれるのだという。それに対する答えは、「まず、外に出てみましょうよ」。散歩をしたり、買い物に出かけたり、外の空気を吸って誰かと触れ合うこと、つまり人とのつながりを大事にすることが一番なのだそうだ。
外に出て何か新しいことに取り組むというのは勇気がいることかもしれない。しかし大崎氏は「何かを始めるのに遅すぎるということはありません」と断言する。78歳で初めてパソコンを触って、今ではTwitterフォロワー数が20万を超える大崎氏に言われると、とても説得力があるだろう。デジタルであれなんであれ、興味を持ったらすぐにチャレンジする精神を持ちたいものだ。