【漫画】森崎さんのロッカーから出てきた謎の機械の正体は? 不思議でかわいいSNS漫画が話題
ーーすべてを知り得ないふたりの距離感に魅力を感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。
匙田洋平(以下、匙田):これまで長編作品を描き続けていたのですが、区切りのいいところを迎えたので製作を休止し、短編作品を描いてみようと思い短編作品を描くようになりました。本作はつげ義春の『石を売る』を下敷きにしながら、読んでいて楽しい作品を意識してストーリーを組み立てました。
ーー少し不思議なしーちゃんのキャラクターが印象に残っています。
匙田:森崎さんと違う性格、違う姿の女の子としてしーちゃんをつくりました。ドタバタな展開の漫画にしたいと思って、森崎さんが戸惑うような怪しい言動をする、森崎さんと対照的な存在としてしーちゃんを描くことを意識していましたね。
ーー森崎さんとしーちゃんの関係を描くうえで意識していたことは?
匙田:仲の良すぎる関係は描きたくないと思っていました。自分自身があっさりとしているからかもしれませんが、どこかベタベタとした関係には噓くさいところがあるように思います。
相手の深いところには立ち入らないという関係の方が現実では多いのではないかと思いながらふたりの関係を描きました。
ーーしーちゃんが森崎さんと“お店をしたかった”思いについて教えてください。
匙田:キャラクターの設定としてしーちゃんは宇宙人であり、森崎さんのことが大好きです。あくまで大好きというのは友達として好きという意味ですが(誤解ないように!)。結局しーちゃんが森崎さんの気を引くためにロッカーにイタズラしたわけです。
お店をするためにふたりが訪れるイベントも多分過去にしーちゃんがお父さんと出展したような場所であり、しーちゃんにとって家庭に近いフィールドなのだと思います。親しみの深い場所で森崎さんと仲良くなるというのがしーちゃんの策略だったわけですね。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンを教えてください。
匙田:最後のページで描いた夕焼けの空ですね。日が暮れると雲の影が空に伸びながら浮かび上がることがあるのですが、その様子がすごくキレイで。ただ作品のなかで描くにあたり“リアルに”ではなく“漫画の絵として”描きたいと思っていました。
常に空や光をキレイに描きたいと思っているのですが、漫画としてデフォルメすることで自分が見た風景の空気感が伝わるのではないかと考えています。本作で多少それができたかなと思っています。
ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
匙田:小学生のころから近所の友だちと漫画を描き、同人誌をつくりながら遊んでいました。そのあとも漫画を描き続け、賞を頂いたり出版社に出入りしたり、雑誌に作品を掲載させていただくこともありました。
その後、生活のためしばらく漫画から遠ざかっていたのですが、これではいけないと思い、作品をインターネット上に投稿するようになりました。
ーー漫画とは別の仕事をしながらも創作活動を続ける背景について教えてください。
匙田:漫画を描かなくなったら生きている意味がなくなってしまう、なんのために生きているのかわからなくなってしまうのだと言う気がしています。もちろん現在は漫画を描くことがお金を得ることにつながっていませんし、創作活動が何かのためになっているかと聞かれると返答に困ってしまいます。
ただ自分にとって漫画は得意なことであり、好きなことです。普通に仕事をするなかで褒められることはそうそう多くありませんが、漫画を投稿するとそれなりに反響をいただくことがあり、するとバカなもので、やっぱり自分の能力を最も発揮できるものが漫画だと思うともっと頑張ろうと思ってしまう。それで漫画の世界にのめり込んでいったのかもしれません。
ーー今後の活動について教えてください。
匙田:もっと面白い漫画を描きたいですね。これは永遠の目標ですが、Twitterに投稿して1万以上のいいねがもらえるような、いつかバズるような作品を描けたらいいなと思います。
また長編作品として描き続けている漫画『夜のロボット』も読者の方に飽きられないように工夫しながら面白い作品にしていきたいです。できればこの作品を本にすることができたらうれしいですね。