【漫画】コインランドリーの洗濯機から手が……恐ろしくも優しいSNS漫画に注目

コインランドリーは“ドラマが生まれやすい場所”

――『コインランドリーのきみ』はどのようにして制作されたのですか?

夜野:明確な経緯があるわけではなく、ある日突然“コインランドリーの乾燥機を開けたら腕がぶら下がっていた”という場面が頭に浮かんだことがキッカケです。家の近所にコインランドリーがありますが、あまり使ったことはありません。ただ、いつも近所のコンビニに行く時、「コインランドリーが出てくるマンガをいつか描きたい」と思っていました。その思いがそういった場面が頭に浮かばせたのだと考えています。

――コインランドリーを「胎内」として捉えたことは斬新でしたね。

夜野:自分は狭い空間が大好きで、狭い空間に入ると「胎内っぽいなあ」と思うため、そこから生まれた発想です。ちなみに、自分はコインランドリーという空間にそこまで思い入れは無いのですが、「洗濯ものが乾くまでに待っていたら、誰かに話しかけられて、それで微妙に仲良くなったり」など、“ドラマが生まれやすい場所”と認識しています。

――登場人物にモデルはいたのですか?

夜野:明確なモデルがいたわけではなく、自分の願望で生まれた人物です。“素朴でちょっと暗い青年と不思議な少女”という組み合わせが好きなので、その通りのキャラを作り上げたら登場人物のような性格になりました。

叙情的な雰囲気を意識

――ホラーのような空気感がありましたが、重々しくなくスッキリ読める内容でした。作中の空気作りとして意識したことは何ですか?

夜野:叙情的な雰囲気を出せるように意識しました。例えば。少女は割とダークなキャラではありますが、不思議でまろやかな感じも出したいため、柔らかな丸の形を意識して描きました。青年のほうは、どこかマヌケな感じを出したくて、表情を少し可愛らしくしたり、ギャグっぽくしたりなど意識しましたね。

――世界観の説明がほぼほぼありませんでしたが、どのような狙いがあったのでしょうか?
夜野:女の子については、青年の淡い恋心から生まれた妄想なのか、それとも現実にいる人物なのか、それらがわからない感じにしたかったです。ミステリアスな読後感を出したくて。読者にも「この女の子は妄想なのか現実なのかわからないなあ、でもどっちでも魅力かも」と思ってもらえるよう意識しました。そのように思ってもらえると嬉しいです。

――読者によっていろいろな解釈がありそうな本作ですが、夜野さんが込めた思いなど教えてください。

夜野:少女は妄想か現実か、その存在はよくわからないけど、それでもこんなに美しい笑顔が見られたのなら、そんな笑顔が見られるのなら、まだ生きても良いんじゃないか。そういう「妄想でも現実でも、どっちでもいいじゃないか。こんなに美しいのなら」「たとえ妄想だとしても、その美しさを美しいと思える瞬間はたしかに存在したのだ」といったことを込めました。

――最後に今後の活動について教えてください。

夜野:漫画制作に関してはとりあえず、「どこかで1冊ぐらいは単行本を出せたらいいかな」と思っています。そして今現在、まんだらけが創刊した『ボヘミア』というマンガ雑誌で連載をしているので、その連載を無事に完結できるようにすることが今の目標です。また、今後も叙情的だったり読んでほっこりするような作品だったり、ダメ人間だけどなぜか魅力なキャラが出てくる作品だったりなど、そういうマンガを描いていけたら良いかなと考えております。ぜひそんな作品を楽しんでもらえると嬉しいです!

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